ステージの上 ページ1
ステージの前に二つの人影。
薄暗いライトに照らされて、Aとイトゥクだと分かると、ドンヘは慌てて物陰に隠れた。
イトゥクはステージに上がって、Aはいくつか後ろの席に座る。
微笑んで、小さな拍手を送った。
A「何か歌ってくれるの？」
茶化したような口調で笑う。
イトゥクはステージをぐるっと見渡して、懐かしむような表情をした。
LT「デビューする何カ月か前…初めてステージに立ったのがここだった…。」
何年もレッスンを積んで…
デビューが決まったばかりで…
嬉しかった…
A「初めての…ステージ…。」
Aの頭の中に、高校生の時、ドンヘと喧嘩した時の事が蘇る。
そう言えば…
ドンへもあの時…
初めてのステージだと…
見に来てほしいと…
思い出しても確かなのは胸の痛み。
LT「ひとつずつ階段を上った…。」
明日の事がどうなるかも分からない世界で…
取り換えのきく使い捨ての世界で…
毎日…
その時の事だけを考えて生きてきた…
A「でもちゃんと…大きくなった。」
そう言われて嬉しそうに微笑む。
LT「でも…いつか終わる…。」
その時が来る事は…
みんな分かってる…
それがいつなのか…
誰にも分からない恐怖…
明日かもしれない…
明後日かも…
1年後か…
10年後か…
必ずやってくる…
終わりの時…
A「そんな事…今から考えなくても…。」
Aは困った顔を見せて苦笑いした。
イトゥクはAをジッと見つめる。
LT「俺は…明日が見えない仕事をしてる。」
たくさんファンがいて…
人目にさらされて…
泣きたい時も笑顔にならなきゃならないような…
家族や友達との時間を…
仕事に費やさなきゃならない仕事をしてる…
だけど…
俺はこの仕事が好きで…
仲間が好きで…
誇りを持ってる…
Aは身動きもせずにジッとイトゥクの言葉を聞いていた。
LT「これが俺の全てだと…。今以上はいらないと…そう思ってた…。」
この人生が…
死ぬまで続けば満足だと…
そう思ってた…
でも…
君を見つけてしまった…
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年1月7日 10時
