巻き戻せない時間 ページ49
突然叩かれて一瞬驚くも、すぐに険しい顔で頬をさすりながらAを睨む。
DH「何すんだよ!」
視界に飛び込むAの顔を見て、ドンヘは顔を歪めた。
大粒の涙を頬にたくさん落としているA。
涙でぼやける視界でドンヘを睨む。
A「なにも…。何にも知らないくせに…。」
ずっと一緒だった…
そんな人が…
突然有名になって…
突然…
いなくなってしまったような…
それがどんなに不安で…
どんなに寂しくて…
一人ぼっちになってしまったみたいで…
それなのに…
それなのに…
身体中を震わせるのに歯を食いしばったように涙を落とすA。
茫然とその姿を見ていたドンヘ。
A「ドンヘなんか…もう知らない…。」
手の甲で止まらない涙をグッと拭って背中を見せる。
ドンヘは手を伸ばしてAの腕を再び掴む。
掴んだ腕を軽く引き寄せると、反対の手で腰をしっかり抱き寄せて、Aにキスを落とした。
呼吸まで止めるような衝撃。
Aは瞬きも出来ずに固まっていた。
腰を抱き寄せる腕に力が入ると、体がさっきよりずっと密着してきつく重なる。
とても長い時間が止まっていたような気さえしてしまう。
ドンヘの胸に手を当てて、慌てて体を引き離すA。
震える唇をキュッとかみしめる。
DH「…ごめん…。」
ドンヘはAと視線を合わせられなくて、俯いて小さな声で謝った。
A「…大っきらい…。」
さっきとは違う感情の涙が落ちて、Aは音楽室を飛び出して行った。
ドンヘは目を閉じて深く息を吐く。
自分でもどうしてキスをしたのか分からずに戸惑っていた。
頬に落ちたAの涙が、いつまでも頭に残ってドンヘを責めているようだった。
Aと喧嘩して…
気まずくなってしまった週末…
俺はここに立っていた…
本当は素直に…
見てほしいと言えば良かっただけだったのに…
Aを傷つけて…
泣かせただけだった…
どうして…
もっと早く…
素直になれなかったんだろう…
好きだと…
愛してると…
傍にいて欲しいと…
たった一言…
言えば良かったのに…
あの時から俺は…
何一つ進歩してない…
あの日…
俺がいなくなってしまうようだと…
泣いていたのに…
いつの間にか…
Aの方がいなくなってしまうのか…
暗がりのなか伸ばす手を撫でるのは冷たい風だった。
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作者名:ゆちょみん | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時:2017年1月5日 15時