絡まる腕 ページ27
DH「大丈夫か！？」
ドンヘは足を止めてAに声だけかける。
A「うん！」
立ち上がって汚れたスカートを手で払う。
A「もう先に行って！」
地面に放りだされたリュックを拾いながらAはドンヘに大きな声を返した。
ドンヘは先に行こうと動きかけた足を止めてAに駆け寄る。
DH「ほら！」
しょうがないな…という呆れたような顔で小さな溜息をつくAにドンヘは手を伸ばした。
DH「まだ間に合う！」
そう言われて泣きだしそうな顔がドンヘを見た。
DH「泣くな！ほら、早く！」
A「…でも…。」
DH「俺が守って走ってやるから！早く！」
Aは唇を軽くかみしめてドンヘの手を握った。
再び人ごみの中を走る二人。
ドンヘはAの盾になるように上手に人ごみを縫った。
握りあう手の温かさで二人はしっかり繋がっていた。
守ってやる！
小さな時から…
何度も…言われて…
何度も…守られた…
ドンヘ…
私は…
もうすぐ…
この手を離さなきゃならない…
手を引かれて歩くAの頬に勝手に落ちる小さな涙。
ドンヘに見られたくなくて慌てて拭った。
Aを守るように歩くドンヘの背中は、あの時よりずっと大きくてたくましかった。
DH「あー…よく寝た…。」
映画館を出ると大きく体を伸ばしてドンヘはあくびをひとつした。
A「熟睡とか信じられない。」
Aの呆れた顔。
DH「あんなもん、2時間も見てられるかよ。」
ドンヘはそう言って歩き出す。
Aはドンヘが寝ていた間の映画の話を聞かせる。
特に興味もないのにAが楽しそうに話すから終始笑顔で頷いた。
DH「食事でも？」
A「ごちそうしてくれる？」
上目遣いで聞くAにドンヘは笑って
DH「しょうがねぇな。」
と言った。
Aはとびきりの笑顔を見せてドンへの腕に自分の腕を絡める。
まるで…
昔に戻ったみたいだった…
Aの隣は…
とても心地よくて…
いつも笑顔でいられた…
泣き虫で…
意地っ張りで…
我がままで…
疲れるほど手がかかるのに…
俺が守ってやらなきゃ…
一人で歩けない子供みたいに…
心配だった…
それが…
他の誰かのモノになって…
俺の傍からいなくなって…
もう…
触れることも出来ないなんて…
ありえない…
絡まった腕をそのままに、ドンヘはAの手に触れる。
自然と視線が合って笑顔を交わすと、そのまま指を絡めて強く握った。
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年1月5日 15時
