結婚の報告 ページ3
同じ頃。
DH「え…結婚…？」
ドンヘはAに呼び出されて、よく行くBARのカウンターで肩を並べていた。
A「そっ。9月に式するの。」
指で撫でているカクテルグラスの柄をつまんで口に運ぶ。
結婚なんてあまりに突然の報告に、ドンへは思いっきり戸惑った顔。
A「何よ。おめでとうくらい言ってよ。」
Aはそう言って苦笑いを見せた。
ドンヘは難しい顔をしたままAを見る。
DH「よく…考えたのか…？」
小さな声をAに投げる。
A「もちろん。結婚なんかノリじゃ出来ないわ。」
鼻で軽く笑い飛ばした。
DH「ヒョンの奥さんになるって事は…俺達と同じように…常に誰かの視線にさらされるって事なんだぞ…？」
グラスの中のカクテルが揺れるのを眺めながら言葉を選ぶようなドンヘ。
A「…分かってるわ…。」
DH「それで…いいんだな…？」
いちいち不自然な息苦しい間。
A「…う…ん…。」
Aの声も自然と小さくなってしまう。
DH「そうか…。お前がそれでいいと決めたのなら…俺は何も言えないよ…。」
ドンヘはAに顔を向ける。
DH「おめでとう…幸せにな…。」
そう言えと言ったのは自分なのに、ドンへの口から出た一言が胸にささる。
A「…あり…がと…。」
Aはドンヘの顔を見られずに、ただ視線を落としたまま。
肩にのしかかるような少しの沈黙も重たくて、ドンへはグラスの中を一気に飲み干すと席を立った。
DH「じゃ…。俺…行くから…。」
鞄を掴んで二人分のお金をカウンターに置く。
DH「気をつけて帰れよ…。」
Aの背中に言葉をかけて足早にBARを後にした。
残されたAはカクテルグラスの淵を指で軽く撫でた。
ジワッと浮かんでしまう涙。
唇をキュッと噛みしめる。
ドンヘの…
バカ…
頭でドンヘに言葉を投げて目を閉じる。
小さな涙が頬に落ちて、Aは頭をもたげた。
ドンヘはBARを出て扉に寄り掛かる。
例えようのない、泣き出してしまいそうな心を奥歯でグッと噛み潰す。
天上を見上げて目を閉じると、鞄の肩紐をギュッと握りしめた。
何が…
おめでとう…幸せにな…
だよ…
あいつの傍にいると…
素直な言葉が…
ひとつも出てこない…
言いたいことは…
そんな事じゃないはずなのに…
俺は…
最悪だ…
夜のソウルには小さな雨粒が落ち始めていた。
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年1月5日 15時
