クリスマスイブ ページ20
気持ちが急いて駆け足になる。
いつの間にかしっかり走ってしまって、クリスマスイブにごった返す人ごみの中、ホームの先頭へ向かって歩いた。
乱れた息を整える。
騒ぎにならないように、マフラーを口元まで引っ張って、帽子のつばを引いた。
暫くして。
電車が過ぎ去った後のホーム。
しばしの間ひと気が引いて行く。
小さなヒール音が近づいてきて、顔をあげて帽子の隙間から視線を投げた。
Gパンにニットのセーター。
赤いコートを着て近づいてくるAの姿。
イトゥクは寄り掛かっていた身体を起こして向き直る。
微妙な距離を残してAの足が止まる。
その距離を埋めるようにゆっくりイトゥクはAに近づいた。
マフラーに指を引っかけて顔を出すと、帽子のツバを軽く持ちあげた。
LT「ありがとう…。来てくれて。」
Aはイトゥクと視線を合わせて小さく微笑む。
A「ごめんなさい…店にいたから…ちっともお洒落してなくて…。クリスマスイブなのに…こんな格好で…。」
そう言われて一瞬きょとんとしたのち、すぐにクスッと笑いだした。
LT「そんな事気にしてるの?どんな格好でも、君は可愛い。」
イトゥクといると、言われ慣れない言葉が降ってくるから、耳まで赤くなりそうだった。
A「でも…せっかくデートに誘ってくれたのに…。」
LT「そんな事言ったら、俺だってデートに誘ったのに、急に仕事が無くなったからお洒落な店のひとつも抑えてないよ?」
Aは顔をあげて
A「そんなっ!場所なんかどこでも…いいんです。」
誘ってくれた事が…
あなたの気持ちが…
嬉しかったから…
ほんのり顔を赤くして、消えてしまいそうな声を振り絞る。
恥ずかしそうに視線を落とす顔がとても綺麗だった。
Aの小さな言葉がイトゥクの心をしっかりと掴む。
がんじがらめに縛られて…
もう少しも解けない…
ホームに通過電車のアナウンス。
身体が触れ合う距離まで近づくと、この間と同じ温かさの腕でAをそっと抱きしめる。
ほのかに香るAの甘い匂い。
目を閉じて伝わる鼓動を感じた。
LT「A…」
好き…だよ…
Aにしか聞こえないような声で囁く。
破裂しそうな程強くて早い心臓。
どうしていいかためらっていた細い腕を、そっとイトゥクの背中に添えるようにまわす。
それがAの返事なような気がして、イトゥクは口元を緩めた。
122人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SuperJunior」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆちょみん | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時:2017年1月5日 15時