キミをスキになりました… 2

小さな文字 ページ17

翌朝。


制服姿でリビングに出てきたA。

シンと静まり返っている部屋。


「オッパ？」


声をかけてみても返事は来ない。


ふと気付く。

テーブルの上のメモ。


仕事だから先に出る…


メモの隅に小さな文字。


俺と生きる未来を…

選択肢に…


『オッパ…。』


小さな文字を指先で撫でた。


一人静かな部屋を出て歩き出す。

慣れた学校までの道のり。


韓国で暮らす…

私が…？

涼ちゃんと離れて…？


頭の中をグルグル回転させて膨らませる妄想。

頑張ってみても、うまく想像出来ない。


足を止めてつく、小さなため息。


RT『幸せ、逃げんぞ。』


聞き慣れた声にハッとして顔を上げた。


『涼ちゃん。』


鞄を肩から下げてニヤッと笑う涼太。


RT『おはよ。』

『おはよ。』


ゆっくりAに近づいて来た。

大きな手がポンと頭に乗ると、長い髪をクシャクシャにひっかく。


『あっ、ちょっとやめてよっ！』


ボサボサになった髪。

涼太は声を上げて笑った。


RT『ひっでー頭。』

『誰のせいよっ！』


ムッと膨らむ頬。


スッと伸びた指先が、細いアゴをクイッと持ち上げると、突然落ちてくるキス。

リップ音を立てながら離れた。


RT『なんだよ。朝から冴えない顔して。』


優しい声が囁くように聞いてくる。


『ううん。なんでもない。』


ほんのり赤くする頬。


RT『あ、俺に隠し事すんだな？』

『隠し事なんかしないよ。』

RT『じゃあ言ってみろよ。あっ！待て。当てるわ。』


腕を組んで悩む素ぶり。


RT『分かった！俺が好き過ぎてどーしよって思ってたんだろ？』


それが茶化しているんだと分かる口調だったのに、Aは涼太にそっと抱きついた。

少しだけ驚いた顔の涼太。


RT『お…おい…。A…？』


背に回した細い腕。

小さな手が涼太の制服をギュッと握りしめる。


想像出来なくて当たり前なんだ…

私の生きて来た世界には…

いつだって涼ちゃんがいたんだから…


『涼ちゃん…愛してるよ…。』


驚きの後に来る微笑み。

長い腕が細い身体を抱きしめ返す。


RT『バカ……。知ってるよ…。』


でもね…

むしょうに怖くなるの…


涼ちゃんは…

いつまでこうしていてくれるんだろうって…


もし…

涼ちゃんがいなくなってしまったら…

私はどうすればいいんだろうって…


涼ちゃんは…

ちゃんとここにいるのにね…


Aは温かい涼太の胸に頬を埋めてそっと目を閉じた。

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