初出勤 ページ2
浪費家ではなかったし、独身女の寂しい一人暮らしだからそこそこあった貯金。
それをはたいて借りたマンションと一から揃え直した家具。
城の準備は万端。
新調したスーツに袖を通してクシを通すだけの髪を一応整えた。
初めて出勤する会社なのに化粧のひとつもしない。
それがダメなんだと分かっていてもし慣れてない事は出来ない。
玄関の姿見に自分を映して深呼吸した。
『大丈夫……。大丈夫……。』
何度も何度も自分に繰り返した。
歩いて20分
家の傍のバス停からならもっと早い。
普段ならバスに飛び乗る所。
環境を変えたんだからちょっとは変わろうと思って20分の道のりを歩き出す。
それでも…。
これまたやり慣れない事は疲れるだけ。
会社にたどり着いた時は、既に1日の仕事をやり終えたような疲労感でいっぱいだった。
勤めるのは日本に本社がある会社。
今流行りのインターネット事業がメインで所属は『流通事業部』
女性の美容関連の品を中心に食品以外ならある程度なんでも扱っていた。
流行の最先端みたいな部署の中での仕事は営業事務。
営業が取って来た仕事の伝票を作ったり、売上をまとめたりと地味な仕事。
本来。
出世を約束された人たちが経験の為に行かされる韓国への人事異動。
自分から望んで希望した、しかも事務職員なんて初めてだと言われた。
*『異動を希望した理由は？』
スーツ姿の偉そうな髪の薄い男に聞かれる。
まさか…
『ドンへと大恋愛がしたんです！』
なんて言えるはずもなくて…
『グローバルに活躍出来るか自分を試したいです！』
とか、カッコ良さそうな理由を大声で、ドヤ顔で話してみたりした。
でも所詮事務…
ただの営業補助だからね…
グローバルも何も無い訳で…
きょとんとした顔をされた挙句大笑いされたっけ…
それでも…
何か良かったのか…
異動願いは受理された…
ピカピカに磨かれた床。
綺麗な広いロビー。
香水の匂いが臭いくらいの受付嬢に話しかけた。
「本日付で日本本社から異動して参りました。流通事業部のものです。」
姿をパッと見て怪訝そうな顔。
え…？こんなのが…？
きっと彼女は今そう思ったはず…
上から下まで舐めるように見られると付いて来るように促す。
少しだけドキドキしながら開かれた部署の扉。
中に足を踏み入れた瞬間から異動を希望した事を思い切り後悔する事になった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆちょみん(プロフ) - HARUさん» いつもありがとうございます。嬉しいです！少しずつ進展して行く感じを楽しみたかったのですがゆちょみんは毎度こういう展開（笑 (2017年3月8日 17時) (
レス) id: ffdc0a5660 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - りえさん» 読みに来て下さって嬉しいです。最後までどうかお付き合い下さい。 (2017年3月8日 17時) (レス) id: ffdc0a5660 (このIDを非表示/違反報告)
HARU(プロフ) - いつも拝見させていただいています!!どうなっていくのか本当に楽しみです。 (2017年3月8日 8時) (レス) id: 4fc073db1c (このIDを非表示/違反報告)
りえ - 切なくて読む度にドキドキして次がどうなっていくのかすごく楽しみです。 (2017年3月8日 8時) (レス) id: 3ce4f408e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - りんさん» ちょっと手さぐり過ぎててぐだっててごめんなさい。まあでもお話はゆっくり進行していきますので、じれったくても見守ってて下さいねｗｗ (2017年3月8日 1時) (レス) id: 2956dc90c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming
作成日時：2017年3月5日 16時
