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「…造花の場所が、分からなくて」
そう言うと、彼はぽかん、と口を開ける。
…なに?こんな狭い店内なのに造花の場所も分かんないのって?
…そりゃこんな花が詰み詰みで置かれてたら分かんないよ。
内心焦りながら、彼の次の言葉を待つ。
10秒くらいかな。いや、もっとあったかも。
次に彼が発した言葉は、
「………ゾーカ、?」
そんな、馬鹿みたいな一言だった。
.
造花、って言うのが分からないのか。
彼は、果たして何に問いを向けているんだろうか。
「…造花、っていうのは、あの、布とかで作ったお花なんだけどお花じゃないみたいな、そんなやつで……」
「…ふぅん、それで?」
「えっ、…それが、どこにあるのかなって…」
体育座りをしていた椅子から足を下ろして、
ゆっくり立った彼は意外と大きくて、胸元に付けられていた名札には殴り書きしたような字で〔こたき〕と書いてあった。
「てんちょー、ゾーカってなんすか」
『ゾーカ?あ、造花ね、こっちですよー』
物腰柔らかそうなお爺さんが、腰を押さえて立ちながら、造花のある場所を教えてくれる。
その間も彼は髪を無造作にかきあげてキャップを被ったり、あくびをしたり、やりたい放題。
…なんでこんな子、雇ったの。
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作者名:にお | 作成日時:2020年6月9日 0時