黒いシルクのシャツ【ヴァリアー短編置き場】 (ページ6)

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黒いシャツの示すものページ6

独立暗殺部隊、ヴァリアー。
ここの制服は、黒だ。

闇に紛れて、血の色さえも彼らを汚すことを許されない。
彼らと同じ色のシャツを着ることが許されたのは、2ヶ月前のことだ。
孤児院から売られて、人身売買をしていたウラノウラファミリーの遣いで、わたしが屋敷を離れていた時。
爆発の騒ぎを聞きつけて戻った私の目の前には、黒煙が広がっていた。
全てを失った私を拾ったのは、ボスだ。

「生きたいのなら来い」

それだけ言ったボスに、なぜか私はついていった。
今まで生きたいと思ったことなんて、全然なかった。
こんなに辛い思いをしなくてはいけないなら死んだ方がマシだと思ったことなら、腐るほどあったのに。

それから私には、いつも同じサイズ、いつも同じ色、デザインの服が用意されていた。
これが、私の戦闘服だ。

「おい。水。」
「、はい」
ボスに水を注ぐのは、いつもの私の仕事。
それくらいしか、任されてはいない。
だけど、私は、たったそれだけの事でも、私に仕事を与えてくれたボスに、本当に感謝している。

私に、生きる場所ができた。

「そろそろ言わずとも注げる様になれ」
ボスがそう言って、するりと私の腰を抱く。
豪華な玉座の手すりは、すっかり私の椅子になってしまった。
メイドが運んで来る水を、ボスの欲しいタイミングで、欲しい量だけグラスに注ぐ。
食事の間はもちろん、仕事中だって、いつも気を抜けない。
ボスがいつ水を欲しがるか、それだけを考えて生きているのだ。

"人は、水がないと生きていけない"

いつか聞かされた、興味もなかった言葉が、頭の中を反芻する。
私がボスの水になれればいいのにと、心のつぶやきに、己が一番動揺した。