黒いシルクのシャツ【ヴァリアー短編置き場】 (ページ5)

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黒いシルクのシャツに隠された:スクアーロページ5

Aは今日も、スクアーロにご飯を恵んでもらっていた。
「しっかり食えよぉ、今日もボスは食べ残しが多いぜ…」
「…スクアーロ、食べないの？」
「俺ぁもう食った」
「そっか…幹部だもんね」
最初の頃はがっつくように食べていた食事も、今では私以外ボスの残したものを食べる(ことが許される？)人が居なくて、結局いつもスクアーロに見守られながら一人でのんびり食べている。

口の中にたくさん詰め込んでしまう癖はなかなか抜けない。
ただ食べるより、幸福感が高いのだ。
「幹部、楽しい？」
「あ？別に、楽しい楽しくないっていうもんじゃねえだろ、仕事なんて」
「…そっか」
沈黙。
スクアーロは、食べているAをじーっと観察するように見ている。
これもいつものことだ。
「A、お前は、暇じゃねえか」
「？」
「俺たちが居ねぇときは、ひとりぼっちだろ」
「…ぁ」
そう言ったスクアーロの方をふと見ると、やはりこちらをじっとまっすぐに見つめている。
寂しさなんて、孤児の頃に比べたら、ないに等しい。
「大丈夫。スクアーロが、こうやってご飯の時居てくれるし」
照れ臭くて落とした視線。
スクアーロは、小さく笑って頭を撫でてくれた。
黒い革手袋の、衣擦れの音がする。
この音と、頭に乗せられた温もりは、まるでシーツのように私を優しく包んでくれる。
「ありがとう、スクアーロ」
「…！…お、おう」

最後にはデザートまであって、やっぱりボスは、わざと食べないで残してるんだろうな、と、
優しさについ顔がほころんだ。