黒いシルクのシャツ【ヴァリアー短編置き場】 (ページ3)

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黒シャツの美学:ベル1 ページ3

ざあああ・・・
天から降り注ぐ雫は止まることを知らず、徐々にその粒を大きくして地面を濡らしていた。
乾いた髪を濡らすシャワーのように、雨粒は地面に吸い込まれる。
ここ、独立暗殺部隊ヴァリアーのアジトの庭を散歩していたAは、ぐっしょりと水分を含んだ服を引きずりながら廊下を歩いていた。
「A様、タオルをお使いください。風邪を引かれます」
メイドが慌てて大きなふわふわしたタオルを持ってAの前に立ちはだかる。
こんなAの姿を幹部の誰かに知られたら大事だ、と思っているであろうということが、Aにも容易に想像できた。
あの人たちは、少し過保護だ。

メイドのメンツを潰すわけにもいかないので「ありがとう」と呟いてタオルを受け取る。
「っしし、そいつにはこっちのタオルの方がお似合いじゃね」
そう言って階段の上から現れたベルにごわごわとしたタオルを投げつけられる。
そのタオルの硬さは、昔いた孤児院を思わせた。
気持ちいいのはメイドがくれたタオルに間違いはないが、今はベルの優しさが身にしみる。
「・・・ベル王子、は、今日はお休みだったの？」
「今日は変態とオカマだけで十分な仕事だったからな。つーか、俺にはないの、さっきのお礼の言葉」
「・・・ありがと」
「ししっ」
「じゃあ、私はこれで。」
「A、こっち」
「え、ちょっ」
先の意思は無視して引かれる手の先には、ベルの部屋。
そしてそのさらに先には、広い浴室が広がっていた。
「お前の部屋の風呂ちいせーだろ。仕方ないから王子の風呂貸してやるよ」
「、あの、別に」
「なにぃ？王子に口答えする気？」
「別に・・・」
「まあいいけど♪」
たまには広い風呂でも入ってみれば、そう言い残して、ベルは部屋へと戻っていった。
広い浴室に、ポツリと1人。
脱衣所ではなく浴室まで入れられたことを考えても、きっとここで脱げということなのだろう。
それはそうだ。いくらタオルを首から下げていても、今のAの格好では脱衣所が水浸しになる。
苦労しながら全ての服を脱ぎ去って、Aはベルの言葉に甘えて真っ白でふわふわの泡が立つ湯船にゆっくりと浸かることにした。