リナリア２ (ページ46)

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広臣side ページ46

結局、隆二に申し訳ない気持ちよりも、Aに会いたい気持ちが勝ってしまった。

隆二の気持ちを知っといて最低だな。

でも、心のどこかで、

バレなければいい。

そう思う俺がいる。

「お仕事お疲れ様。」

だって、俺にもこの笑顔を向けられる権利はある。

だって…

だって、Aを好きなのは、隆二だけじゃない。

俺もだから。

・

『Aから誘いとかなに？隆二から俺に変更？』

＂そんなわけないでしょ！＂って俺を笑いながら睨みつけるA。

そんなわけねえのか。

「片想いが辛くなっただけ。」

……片想い、か。

2人の気持ちを知っている俺はどうしたらいい。

2人の気持ちを知った上で今ここにいる俺はどうしたらいい。

2人の気持ちを知った上で、Aを好きになってしまった俺は、…どうしたらいい。

「広臣？」

『あぁ、ごめん。…片想い？』

「自信なくなっちゃった。」

『なんかあったの？』

「ううん、特には。むしろ嬉しいことはあったんだけどね。」

お店まで歩く間、ずっと隆二の話をしているA。

お見舞いに行ったときの話を、嬉しそうに、でも少し悲しそうにする。

『えっ、なんで？まだ帰らないでって言われたんだろ？…いい意味じゃねえの？』

「んー…きゅんとしたの。すっごい。」

『うん。』

「だけど、それは熱で辛かったからだし…それに、女慣れしてるのかななんて。」

『女慣れ…、隆二は女慣れなんてしてねえよ。

むしろ苦手。』

「えっ、そうなの？じゃあ…」

『期待してもいんじゃない？』

そう言えば、曇った顔はぱあっと明るくなり、

今日一番の笑顔で俺を見上げる。

俺は、Aの笑った顔が好きなんだよ。

だから、隆二への気持ちだとしても

笑ってくれれば、それでいい。