○ だって僕たちまだ他人 ページ14
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空閑とゾムは対して関わりがない。
ゾムは隠密が基本の暗殺部隊らしくあまり姿を現さないし、見かけて話しかけようとしたらピャッとどっか行くし、アレ何かパンツ見られてんナ？ と思ったら200m先くらいにゾムがいる。
見てるだけで話しかけてこない。アイドルの親衛隊みたいな感じ。
だからこうして押し倒される意味が分からない。
「岳、な、なあ。こっち向いて。お、俺見て」
「ウン」
「ガッ、」
「オ……」
不審者から逃げられない場合は従順なフリをしろ。スケベな事要求されたらタマナシにしろ。
シャオロンからの教えである。タマナシにする仕方も教わった。
「3歳に何教えとるん！？」てエーミールはお冠だったけど。3歳とはなんだ。空閑はムッとしたけれどシャオロンが「岳〜？」「ム」「コレやるわ」「ワ！(歓喜)」てアンパンマンのペロチョコをくれたのでおーるおーけー。まるです。
だというのに、従ってみたらゾムの喉から変な音がしたので空閑はビックリした。初めてレモンを食べた赤子の顔をしている。
「……。」
「ッヒヒ、ハ、岳の手、ちっちゃいなぁ。か、簡単に折れるやん、」
任務帰りで興奮が冷めやらないゾムは空閑のちまこくて華奢な手を握る。握った手は怯えの脈を見ていた。
空閑は抵抗しなかった。したらまぢで折られんのカナと思ったので。女の手ってこんなに中手骨が薄いモンなん、エ〜かわええとゾムは思っていたので大正解である。飴細工みたいに簡単に壊せるなとも思っていた。
中節骨をスリと合わせて熱が馴染む。互いの指を絡ませて息を吸う。甘くて諄い。
本当に口を吸ったらどれくらい甘いのかなんて紅がのったませた唇に目を落としてから、ゾムは「カハハッ」と獄卒みてえな笑い声をあげた。
「は！ 初めて見た時からな、おも、思っててん」
「？ ウン」
「ぁ……ぇ、えっと」
緊張で吃って、舌が縺れる。空閑は「タンマ。落ち着いてこ」と呑気に笑っていた。あの子みたいに。マリアみたいに。
血で張り付いた髪を払おうと頬を掠める空閑の白い手を掴む。それから乱暴に上体を起こさせて細い腰を抱いた。折れそうな腰だった。抱き殺せそう。
────あゝ、ソレええな。
「と、友達。友達、なってぇや」
深淵をのぞく時深淵もまたお前を覗いてあそばしている癖に、蟻を殺すより簡単な要求を苦しそうに宣うゾムに本気で困惑してしまった空閑は「お？ オォ」と肯定の鳴き声を上げた。
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作者名：___ | 作成日時：2023年7月23日 21時
