BESTの妖物語参之巻 (ページ49)

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◆ ページ49

side Unknown

「……っつ。クソっ！」
「大丈夫か」
「これが平気に見えるかよ！」

痛みに耐える鈴蘭を心配する炎鬼。
背中の傷が思った以上に痛むようだ。

「重い一撃だ。奴ら、ここまで力をつけたとは」
「あぁ。治りも遅いし……ヤバいかもな」

想像してなかった弱音が出てきて、炎鬼は不安げにしている。
そして、炎鬼には不安要素がもうひとつ。

「…………」

氷雨の様子がおかしいのだ。
表情が暗く、戦闘狂のような部分が見えない。

まるで、この間の戦いを悔しがってるようだ。

「氷雨、お前も大丈夫なのか？」
「大丈夫じゃないからほっといて」

返答すらも普段の氷雨と違う。
まるで別人のようだ。
……そもそも人ですらないのだが。

「おまえ、本当にあの狂ってる氷雨か？」
「うるさい……うるさい！」
「……大丈夫かよ」

鈴蘭が乾いた笑みを浮かべながら呟く。
そして、覚悟を決めた表情で立ち上がった。

「ちょっと行ってくるわ」
「どこに？」
「剣士どものところだ。動けるうちに全てを終わらせる」

そうして歩き出そうとする鈴蘭の腕を氷雨が掴む。

「急にどうした？」
「えっと……」
「なんだよ急に。相変わらず変なやつだな」

また笑った後、鈴蘭は部屋を出ていった。