BESTの妖物語参之巻 (ページ27)

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◆ ページ27

side Yuya

身体の一部が、力が抜けた感覚。
そんな違和感を抱えながら目を開けると、いつの間にか楽屋で眠っていた。

「無理に動かない方がいいよ。力奪われたっぽいし、仕事の前に休めるだけ休んどけ」

小さな声をかけられた方を見ると、俺と同じように毛布をかけられ横になっている光くん。
伊野尾くんも毛布にくるまっている。

山田は……まだ寝てるみたいだ。

そうだった。
俺、氷雨と相討ちになったんだ。

無事かどうか不安だった光くんと伊野尾くんも、元気そうで一安心。

「それにしても、何話してるんだろう？」

俺より少し先に起きてた伊野尾くんが首を傾げる。
起きてるみんなで重要そうな話をしてるみたい。

うーん。小声だけど、俺ならギリギリ聞き取れそう。

「嘘でしょ……」
「なにか聞こえたの？」
「剣士のこととか説明してる」
「ええっ!?」

俺に聞き返す伊野尾くんが珍しく声を出して驚く。
幸い、薮くんたちは話の方に集中してたし気づかれてないみたい。

「仕方ないよ。知念とか巻き込んじゃったし」
「そっかぁ。それにしても、光どうかした？さっきから珍しく黙り込んで」
「ごめん。……今の俺らって、ただの人間に戻っちゃったんだよなって」

そう。力を奪われた俺らは、何も知らなかった前の自分たちと同じ。

「言い方悪いけど、今なら戦いから逃げられるよ。これ以上危ないことだってあるだろうし……」
「光は優しいねぇ」

暗い顔で話す光くんを遮る伊野尾くん。

「もしかして俺たちを心配してくれてるの？なら余計なお世話だよ」
「……髙木は？」
「有岡くんが忘れちゃった時と同じだよ。戦えなくても、なんだかんだでみんなのことが心配になって割り込んじゃう」
「だよね。大ちゃんは当然だろうけど、薮も同じだと思うよ」

「そうだな。愚問だったわ」

光くんに笑顔が戻る。
やっぱり、みんな明るい方がいいよね。

「光くん、愚問なんて言葉知ってたんだ」
「確かに。知ってたんだね〜」
「これぐらい知ってるわ！」

「……ふふっ」

俺らが少し騒がしくしていると、聞こえてきた小さな笑い声。
山田も無事に目を覚ましたみたいだ。

あとは、奪われた力をちゃんと取り戻さないとね。