BESTの妖物語参之巻 (ページ20)

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◆ ページ20

side Kei

自販機横で髙木と話していると、影の反応と共に時間が止まった。

「うわっ。うじゃうじゃ出てきた」
「この影の量は異常でしょ……。髙木、ちょっと頼む」
「ええっ!?」

髙木に影の対応をお願いして、俺はみんなと連絡を取ることにした。
まずは、履歴の上の方にあった光から。

「……もしもし、光？大丈夫か？」
『あ、ごめん。光くんじゃなくて山田』

電話から出たのは、光じゃなくて山田。
時間が止まってるのに……なんで？

「……なんで山田が？」
『なんで？あぁ、光くんがスマホ置き忘れてて。どうかした？』
「いや、大丈夫。じゃあね」

混乱のあまり、電話を切ってしまう。
なんとか周辺の影を倒した髙木にこのことを話すことにした。

「山田が電話に出たの!? なんで？」
「わからない。しかも、時間が止まってるのに動揺してなかった」
「それは……楽屋だからかもよ。廊下とかは人の動きで気づけるけど、楽屋は誰もいない時は気づかないだろうから」

髙木の言葉にとりあえず納得する。
でも結局、山田が動けている理由はわからない。

山田が氷雨に憑依されてるのか？

いや、それだけで決めつけるのは早すぎる。
……そう理由つけて、信じたくないだけかもしれないけど。

「伊野尾くん、山田のところに行こう」

突然、髙木が楽屋に戻ろうと提案してくる。

「氷雨に憑依されてるかもしれない。けどそうじゃなかったら、山田が影に気づかれて狙われるかも」
「そうだね。どっちにしろ、会って確かめないと」

それにね……。
そう言って、髙木がポケットから1枚の札を取り出した。

「倒しても氷雨が憑依を解くかわからなかったから、用意してたんだよね」
「これ……人と影を分離するやつだよね？」

髙木が取りだしたのは、憑依された人から影を引き剥がす札。
まぁ、相手を気絶させれば勝手に影が身体から出ていくし、意外に使わないんだけどね。

でもこれなら、セブンの誰かを極力傷つけずに済む。

一筋の希望を感じながら、髙木と一緒に楽屋に向かった。