慧と…… ページ3
どこまで走ったんだろうか。
ふと、正気になって辺りを見渡してもどこかわからない。
どうやって帰ろうか……。
「慧」
僕を呼ぶ声。大貴だと思って振り返る。
けど、髪型が少し違うし服も今の人が着るようなものではない。
もしかして
「大貴なの？」
「そうだよ。久しぶり、会いたかった」
さっきまで一緒にいた方じゃない。
彼だ……
「どうして？ 大貴はもう……」
「細かいことは気にしないで」
そう言いながら、大貴は僕に近づく。
「待って！」
「慧？」
僕は近づいてくる大貴を止める。
だって、こんな中途半端な気持ちで大貴と一緒にいれない。
「こんな僕と一緒にいちゃダメ」
「なんでか聞いていい？」
「今目の前にいる大貴とさっきまでいた大貴は違う。君が好きなままなのに、大貴のことも好きになっちゃうなんて僕、最低だよ」
「生まれ変わった俺と両想いになることで人間になれる。そういう約束だったでしょ」
「たとえそうでも、全然違うよ」
一緒にいたからわかる。
彼と生まれ変わりである大貴は同じところもあるけど所々違う。
一緒じゃないんだ。2人とも別の人間。
生まれ変わりだからって理由だけで大貴を愛してるわけではないし、もうこの世にいないって理由で君を忘れられないんだ。
「昔そばにいてくれた君と、今そばにいてくれる大貴。生まれ変わりだからって一緒にしたくない」
「……なら、それでいいんじゃない？」
彼がニコッと笑う。
僕をが怒ったりしないのかな？
「俺はもう死んだ人間だよ。もう前に進んでいいんだよ」
「でも……」
「あの子のことを好きになったら、もう俺のこと好きじゃなくなっちゃう？」
「それは絶対ない！」
「俺はそれで充分。少しでも長く慧の心の中に俺が残っていればいいからさ。まぁそう簡単に消えてはあげないけどさ」
「消えないよ。なにがあっても、僕の中から君がいなくなることはない」
いつまで経っても君に助けられてばかりみたいだ。
でも、おかげで答えが見つかった。
「愛してるよ。大貴」
「……ありがとう。さぁ、早く行ってやれ！」
彼がそう言って後ろを振り向かせる。
そこには、おそらく僕を探してると思われる大貴。
「きっと寂しい想いさせてるからさ。早く気持ち伝えてこい」
「なんで……？」
「別人でもあいつの前世だぜ。なんとなくわかるよ」
「……ありがとう!!」
僕は彼に背を向けて、走り出した。
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作者名：あやか | 作成日時：2020年10月22日 14時
