◆ ページ10
・
あの日から、たまに喫茶店へと向かうようになった。
この店の2人とは、今では敬語も取れて気軽に話せている。
「店にいるなら注文してくれない?」
「頼んでるじゃん。コーラ」
「ドリンク1杯で何時間粘るのさ」
知念が呆れた目で見つめてくる。
伊野ちゃんの事情を知っている数少ない人たちが集まる店。
少しでも長い時間いたいのは仕方ない……と思う。
「それにしても、ここのメニューってスイーツ系多いよね?」
話を逸らすために、前から考えてた疑問を投げかける。
「ここは獏の一族が集まるから」
「どういうこと?」
「あのね……」
知念の説明をまとめると、こうなる。
悪夢を食べるには、その悪夢に入らないといけない。
でも、毎日悪夢に入ってると、精神がもたなくなってしまうらしい。
だから、悪夢の代わりに現実での糖分摂取を代用としているそうだ。
「まぁ、悪夢に比べたらエネルギー量は少ないけどね」
「伊野ちゃんも普段から悪夢に入って食べてたの?」
「それは違う」
「え……?」
違うって?
……そっか。
伊野ちゃん、悪夢を食べ忘れたって。
「いつからか覚えてないけど、悪夢を食べるのを避けだしたの。糖分補給で誤魔化してたみたい。甘いもの、多く食べられないのにさ」
確かに、伊野ちゃんは甘いものをたくさん食べられないタイプ。
でも、悪夢を食べなくなったって何?
食べ忘れって言ってたけど、わざと食べてないみたいな言い方。
まるで、消えることを求めてたような……。
「大貴?」
「……えと、だから甘いもの持ってないかって聞いてきたのか」
「何の話?」
「伊野ちゃんとの出会いのこと」
「なにそれ気になる」
頭をよぎった考えをかき消すように、知念と思い出話に花を咲かせる。
やっぱり俺、伊野ちゃんのことを全然知らない。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーJUMP
中島裕翔
68人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あやか | 作成日時:2024年2月4日 19時