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あの日から、たまに喫茶店へと向かうようになった。
この店の2人とは、今では敬語も取れて気軽に話せている。



「店にいるなら注文してくれない?」
「頼んでるじゃん。コーラ」
「ドリンク1杯で何時間粘るのさ」



知念が呆れた目で見つめてくる。

伊野ちゃんの事情を知っている数少ない人たちが集まる店。
少しでも長い時間いたいのは仕方ない……と思う。



「それにしても、ここのメニューってスイーツ系多いよね?」



話を逸らすために、前から考えてた疑問を投げかける。



「ここは獏の一族が集まるから」
「どういうこと?」
「あのね……」



知念の説明をまとめると、こうなる。


悪夢を食べるには、その悪夢に入らないといけない。
でも、毎日悪夢に入ってると、精神がもたなくなってしまうらしい。

だから、悪夢の代わりに現実での糖分摂取を代用としているそうだ。



「まぁ、悪夢に比べたらエネルギー量は少ないけどね」
「伊野ちゃんも普段から悪夢に入って食べてたの?」
「それは違う」
「え……?」



違うって?

……そっか。
伊野ちゃん、悪夢を食べ忘れたって。



「いつからか覚えてないけど、悪夢を食べるのを避けだしたの。糖分補給で誤魔化してたみたい。甘いもの、多く食べられないのにさ」



確かに、伊野ちゃんは甘いものをたくさん食べられないタイプ。


でも、悪夢を食べなくなったって何?
食べ忘れって言ってたけど、わざと食べてないみたいな言い方。

まるで、消えることを求めてたような……。



「大貴?」
「……えと、だから甘いもの持ってないかって聞いてきたのか」
「何の話?」
「伊野ちゃんとの出会いのこと」
「なにそれ気になる」



頭をよぎった考えをかき消すように、知念と思い出話に花を咲かせる。


やっぱり俺、伊野ちゃんのことを全然知らない。

◆→←夢で生きる君


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作者名:あやか | 作成日時:2024年2月4日 19時

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