夢で生きる君 ページ9
side Daiki
「知ってる? 夢ってね、実は毎日見てるんだよ」
今日はデート。
ホットケーキが美味しいと伊野ちゃんに誘われた喫茶店。
伊野ちゃんが突然言い出した。
「なにそれ?」
「人は毎晩必ず夢を見るんだよ。覚えてないだけ」
「そうなんだ」
「俺たちは、覚えてないだけで毎晩夢の中で出会ってイチャついてるかもしれない」
「い、いちゃ……変な事言うなよ!」
「冗談だよ。初心な大ちゃんには早かったか」
少し苛立ちながら、ホットケーキをひと口食べた。
伊野ちゃんは俺を子ども扱いしてばかり。
俺と伊野ちゃんはひとつしか違わないのに。
それに、恋人だし!
なんでいつも子ども扱いするんだか……。
「でも覚えてるのってよっぽど良い夢か悪い夢のどっちかだよね。俺、前から悪夢をよく見てたからさ。あ、さっきの話的に覚えてる、か」
「…………」
伊野ちゃんがそっと俺の頭を撫でる。
何気ない話なのに、どうしたんだろう?
「獏って知ってる?」
「動物だよね。テレビで見たことあるよ」
「それもあるけど、空想の生き物の獏」
「……そっちは知らないかも」
「簡単に説明すると、悪夢を食べてくれるんだ。『獏食え獏食え』って寝起きに呟くといいんだよ」
「そうなんだ。伊野ちゃん物知りだね」
「だからさ。悪夢を見たら、俺の名前を呼んで」
……
…………あれ?
なんでそうなるの!?
悪夢を見た恋人を心配してると思って嬉しく感じたのに、なんで急に自分の名前を呼ばせようとするの?
「なんだよ急に」
「俺が悪夢を食べて大ちゃんを守るから。俺、嘘はつかないでしょ?」
「テキトー男が何言ってるのさ」
「大ちゃんに対しては本気だよ」
いきなり真剣な眼をして俺に近づく伊野ちゃん。
そっと口元のメープルシロップを拭って、ペロリと舐めた。
「この店だって、大ちゃんだから教えたんだよ。俺のこと、いっぱい知りたいのも知ってほしいのも、これが初めて」
そう言ってくれたのに、彼に関して肝心なことはまったく知らない。
そのことに、伊野ちゃんが消える前に気づきたかった。
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作者名:あやか | 作成日時:2024年2月4日 19時