夢と現実の狭間で生きる (ページ8)

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目を覚ますと、見知らぬ空間。

ソファーにロッカー。
バイトの休憩室って感じ。

「そうだ。八乙女さんたち……」

部屋を出ると、寝る前に見た喫茶店。

黄色のエプロンを着た八乙女さんと、食事中の……知念さん、だっけ？

「……ひか、起きたみたいだよ」
「本当だ。お腹減ってる？無理やり連れてきたし、なんか作るよ」

渡されたメニューからオムライスを選び、知念さんの隣に座る。
なんか、知念さんの視線が痛いような……。

「えと……」
「ひかがわからないって言うから誰かと思えば……前に伊野ちゃんと店に来た人じゃん」
「来たのけっこう前だから不安だったんだよ」

思い出した。
ここ、前に伊野ちゃんに教えてもらった店。
だから既視感あったんだ。
でも……この2人はいたっけ？

「来たのは覚えてますけど、いましたっけ？」
「覚えてない？俺、あの時ホットケーキ持っていったんだけど」
「僕は休憩室から少し見た程度だし、当時のひかは茶髪だったから仕方ないでしょ。髪色のせいで雰囲気別人レベルだし」

最初からこんな派手な髪色ではなかったのか……。

2人が仲良さげに話してるからか、ほのぼのとした空気が流れる。

それどころじゃないよ！

「2人は……伊野ちゃんと同じ、獏の一族なんですか？」

2人の会話が途切れる。

「俺はそうだね」
「俺は？知念さんは違うんですか？」
「僕は違うよ。この店に獏の一族がよく来る影響で、色々知ってるだけの一般人」
「どこがだよ。明晰夢だっけ？なんだかんだで夢のロビーに行ける奴が一般人なわけないだろ」

八乙女さんが伊野ちゃんと同じで、知念さんがすごい人ってこと？
寝起きなのもあって、頭がクラクラしてしまいそうだ。

「ありがとうございます。おかげで伊野ちゃんにまた会えました」
「固くならなくていいよ。俺ら歳も近いし、これからも伊野ちゃんに会うなら、ここにもまた来るだろ？」

オムライスと共にニコッと笑う八乙女さん。

また来ていいんだ……。
伊野ちゃんに会っていいんだ……。

口角が上がるのを誤魔化すために、オムライスを一気に食べる。

「ちょっと、オムライスは逃げないよ！」
「うめぇ！ひか、知念、ありがと。これからよろしくっ」
「距離近くなるの早すぎるでしょ。……話で聞いた通り、子どもじゃん」

悪夢みたいな現実に光が差した気がした。