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お店についてホットケーキを注文する。
ここでホットケーキを注文するのは、伊野ちゃんがまだ現実にいたとき以来だ。
「伊野ちゃん、いい加減にして。ふざけてるでしょ」
「ふざけてないよ」
「早く原因突き止めないといけないのに」
「怒ってる大ちゃんも可愛いけど、落ち着いて」
「落ち着いてられないよ……」
最近までは落ち着いてたけど、俺は昔から悪夢ばっかり見る。
昨日まで見ていた悪夢はもう終わっただろうかと怯えていた頃だってあった。
でも、悪夢のことで誰かを頼れるってわかって、すごく嬉しかったんだよ。
……面倒ごとに巻き込んじゃうことへの罪悪感はあるけど。
「俺を、悪夢から守ってくれるんじゃないの……?」
「もちろん、守るよ」
テキトーな姿から一変、俺を真っ直ぐに見つめながら、伊野ちゃんは応えてくれる。
「夢ってね。さっき話した通り人の心が影響することがあるんだ。だからこそ、少しでも明るい気持ちでいた方が、悪夢も和らぐと思うんだ」
根拠はないんだけどね。
伊野ちゃんはそう言って、フォークとナイフを取り出す。
夢だからか、いつの間にかホットケーキがテーブルに置かれていた。
伊野ちゃん、俺のために明るく振る舞ってくれたんだ。
「ごめん。俺のためにやってくれたのに……」
「暗くなるの禁止。ほら、夢の中でも美味しいよ」
美味しそうに伊野ちゃんが頬張る。
メープルシロップをたっぷりかけて、俺もひとくち。
あれ?
味がしない。
夢だし、仕方ないのかな?
でも、伊野ちゃんが嘘をついてるようには見えない。
俺と伊野ちゃんの関係はとっても近いはず。
それなのに、なぜか伊野ちゃんが遠い存在のように感じた。
「やっと見つけた!」
着いたのはおもちゃ屋さん。
伊野ちゃんは店内の商店街を表したジオラマを指さした。
ちょうど先に進めなくなったところに、キラキラ輝く隕石が落ちていた。
「大ちゃん、最近このジオラマ見に来たでしょ?」
「久々に見たくなって……」
「きっとその時に落とし物しちゃったんだよ。隕石だから、アクセサリーかな?」
「だから、この悪夢を?」
「隕石が落ちて通行止めになったから、最初に戻ったんだよ」
「意味わからないよ」
「夢なんてそんなものだよ」
笑いながら手を出し、悪夢をひとつにまとめていく。
まとまった悪夢は、メープルシロップのような琥珀色の球体となって、伊野ちゃんの口へ消えていった。
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作者名:あやか | 作成日時:2024年2月4日 19時