僕、憑かれました。 (ページ23)

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◆ ページ23

事件はとつぜん起こった。

「それでさ、隣のクラスの田中がさ……」
「なにそれ」

慧と宏太は2人で駄菓子屋に来ていた。
駄菓子屋の少し先に歩道のガードレールによりかかって三角座りをしている子どもの幽霊がいた。

「俺お金払ってくるけどどうする？」
「俺は……人もいないし、ちょっと話してくる」
「幽霊か？」
「うん。悲しそうな顔で……ちょっとだけ話してくるね」

そう宏太に断りを入れたあと、彼は子どもの幽霊のところに向かった。

「こんにちは」
「……！ …………僕が見えるの？」

驚いた顔をする彼。

「俺、慧っていうの。君は？」
「僕は＿＿＿」

そんな感じで宏太が戻るまで、慧はその子と話をしていた。
そんな時……

「危ない！」

宏太が叫ぶと同時に慧を突き飛ばした。
慧は突き飛ばされたことでバランスを崩し、倒れた。その直後、駄菓子屋のおばちゃんの叫び声が聞こえた。

・

結論から言うと、慧は宏太と会うことはできなかった。

奇跡的に宏太自体は怪我も軽く、数週間で退院したという。
しかし、罪悪感でいっぱいだった慧は宏太に会いに行く勇気がなかった。

……そして、宏太が退院したとほぼ同時に彼と彼の家族は引越した。
宏太がやけに焦っていたのは、引越しのため、今回2人で遊ぶのが最後だったからだった。

あのとき、もっと早く車に気づいていれば……

まわりのことが見えなくなるぐらい幽霊と話したりしなければ……

そもそも、幽霊なんて見えなければ……

まだ幼い彼にはこの衝撃はとても大きく、なにかに責任転嫁するしかなかった。

そのうち、慧は幽霊そのものを嫌悪するようになった。

あのオルゴールは宏太が慧に誕生日プレゼントとしてあげたものだった。

今は友達いえるかどうかわからない状態の彼との唯一の思い出だったんだ。
だから、慧はあんなにも怒ったんだろうね……。