続・施肥 ページ7
your side
志賀くんが電話に応答するようだから、彼には申し訳ないけど先にコーヒーを頂いてしまおう。冷めても美味しいだろうけど、やっぱり淹れたてが1番美味しいからね。
コーヒーの芳醇な香りに包まれながらホッと一息ついたところで、皺がついたメモ用紙のようなものを見つける。こんなものさっきまであったかしら?
志賀くんのだろうからあまりジロジロ見ないようにはしたのだけれど、どうしても気になるものだから内容を拝見させて貰う。
かさりと乾いた音を立てる紙質。
罫線の上を踊っていたのは、紛れもなく彼の字だった。
横書きのメモ用紙に無理やり縦に書かれた短歌。
上の句の途中までは鉛筆で、消した跡も沢山あるのに、そこから下はボールペンでスルスルと書き連ねられていた。
……志賀くん、こんな事を書かれてしまったら期待してしまうよ。
幸いにも彼はまだ来ない。
淹れたてのコーヒーと同じ温度になった顔の火照りと共に、素知らぬ振りをして彼を待つ。
ーいつの日か 貴女に捧ぐ 紫苑色
咲かぬとも知る 春の訪れー
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作者名:杉山 | 作成日時:2023年8月17日 1時