5月中旬 同時刻 ページ7
trsk side
今日は撮影もないしフラッと本社に寄って仕事をしていた。偶にはみんなの顔見ながら作業したいんだよね。
だいぶ記事も打ててきたし、少し休憩するかなぁ。
自分のマグにコーヒーを入れ、行儀は悪いがビーズクッションにほぼ寝転がりながら手元にある真っ黒な色の液体を啜る。
我らがCEOは豆にこだわる人らしく、会社のコーヒーはかなり良い豆を使っている。お陰で芳醇な香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。
半分ほど飲み終えやっと一息ついたとき、インターホンの音が耳に入った。
福良が間伸びした返事をした後インターホンで少し応答をする。声質的に女性みたいだ。今日は誰かをゲストを呼んでの撮影だったかな…？
そんな疑問も束の間、
「今から新しく採用したアルバイトの子が来るよ」
と福良が言い放ち、玄関を開けに行ってしまった。
そういえば先週あたりまでの彼はかなり大変そうだった。僕は採用担当ではないからいつもと変わりはなかったけど、なんらかの形で募集に携わっていた人は皆顔が死んでいた。
戻ってきた福良の後ろには良く言えばクールな、言い換えれば無愛想にも見える女性がいた。
だが表情こそ抜け落ちていれど、彼女はかなり整った顔立ちをしていた。
日焼けや肌荒れを知らぬような陶器のような白い肌。少し厚めの小さな唇や筋の通った高い鼻は、まるで黄金比の如くそこに綺麗に収まっている。
緩くウェーブがかかった髪は1束1束に電灯の光が反射して天使の輪が出来ているし、オレンジを基調としたメイクは瞼の上でキラキラと星が瞬いているようにも見える。
僕の頭の中に最初に浮かんできたのは、
『人形みたい』
の5文字。
東大王などの収録で沢山の綺麗な女性とは共演してきた。
目の前を通り過ぎる彼女は共演者には程遠いような一般女性。だが何故か目が離せない。
抜け落ちた表情さえも一つの演出のように感じられる。それもまた彼女の魅力なのかもね
ーーあぁ、僕はこの人をよく知りたい。
だがこの感情はきっと一目惚れの類なんかではない。
恐らくまだ見たことないものへの期待や知的好奇心と似た様なものなのだと思う。
2人がどこか空いた部屋に行ってから、福良だけが戻ってきた。伊沢を呼びに行くらしい。
ふと福良さんと目があった。そういえば7秒以上目が合えばその人は自分のことを好いているとかあったなぁなんて考えながら彼を見ていれば、そのまま彼は長い脚でゆうに3歩程でこっちに来て僕に声をかけた
「鶴崎も来てよ。案内役が欲しかったんだ」
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作者名：杉山 | 作成日時：2023年1月23日 22時
