フェルマーの最終定理なんて解らないけど【QK】【trsk 】 (ページ6)

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5月中旬ページ6

草薙side

リモートでの2次面接もなんとか終え、無事にQuizKnock ライターとしてアルバイト出来ることになった。

CEOの伊沢さんはかなり話がお好きな方らしかった。面接の最後の方はだいぶ一方的に話されていた気がする。

内定を頂いた後、スマホに日時とGPSが送られてくる。顔合わせのために本社に来るようにということらしい。

何本か電車を乗り継ぎクソでっかいマンションの高層階にたどり着く。改めて凄いところでバイトしようとしてる事を実感する。

少し強張った指先でインターホンを鳴らすと、福良さんの独特な高めの声で少し待つよう言われた。

数十秒後、鍵が開けられ、初対面なのに見覚えしかない彼の姿が見える。

『…初めまして。アルバイトに採用された草薙と申します。』

マズい、変な間を作ってしまった。
それに私の表情筋は緊張すると役目を放棄する癖がある。
きっと福良さんから見た私は無愛想レベルがカンストしたヤバい奴だ。人の印象は8割が初対面3秒だというのに何という失態。

「プロデューサーの福良です。とりあえず中に入って下さい」

そんな杞憂をよそに、福良さんはにこりと人当たりの良い笑みを浮かべながら返事をしてくれた。本当に優しい…コミュ障には有難い存在である。

案内された室内には動画でよくみるあの赤いソファや、机があった。相手の事を知らなければ、と見始めてからQuizKnock にハマってしまった私は密かに興奮を覚える。

しかし福良さんは足を止めない。もっと奥の部屋に行くらしい。やっと福良さんの歩く速度が緩やかになったのは、『会議室B』と書いてある部屋の前だった。

「ここで待っていて下さい。伊沢を呼んできます。」
それだけ言うと福良さんは静かに扉を閉めて何処かへ行ってしまった。

…こういう場合勝手に椅子に座って良いものなのだろうか。
勝手な行動をして怒られるのも嫌だが、臨機応変な行動が出来ないポンコツだとも思われたくないのでとりあえず座って2人を待つ。

2人を待ち始めて数分が経った。10分にも満たない時間なのに永遠に感じられる。ダラダラとアニメを思い出している時に、再び扉は開かれた。

そこには福良さんと伊沢さん、そして何故か鶴崎さん。

前の2人が居るはわかる。だって呼びに行った人と呼ばれた人なのだから。問題は鶴崎さんである。何故いるのだろうか。人が増えると困るのだが…

ひとまず相手の話を聞かなければ。

1人の女は頭の中で何故を繰り返しながら椅子から立ち上がった。