フェルマーの最終定理なんて解らないけど【QK】【trsk 】 (ページ24)

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7月下旬ページ24

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Twitterの件があってから2週間が過ぎようとしていた。不本意ながら常に誰かが居る状況にも慣れてきている。
今日はこうちゃんが僕と一緒にいてくれる日らしい。2人で電車内の空いた座席に腰掛ける。

静かな電車内、明るく優しいこうちゃん、ほんの少し雲のある青空。

いつも通りのなんて事無い日常である。

しかし、どう頑張っても会議の日の瑞稀さんのなんとも言えない表情だけは脳内から消せずにいた。

ここ暫く彼女はかなり忙しそうにしていた。学業もある筈なのに事務所では沢山の雑務をこなしていた気がする。そりゃあフラフラにもなる訳だ。

しかし、あの日の瑞稀さんの表情はただの疲労からくるものには見えなかった。もっとこう、闇に触れてしまった様な……ドロリとした眼をしていたうえに、焦点は定まっていなかったように見えた。いつも真顔だ、と言われていた彼女だが、あの時だけは真顔ですら無かった。完全に表情が抜け落ちた、とでも言えば良いだろうか。

一体何が彼女をあの様な状態にさせたのだろうか。

そんなにあの女性がした事が許せなかった？
否、瑞稀さんは以前多種多様な人が居るんですね、と動画に来たアンチコメントを見て言っていた。正義感が強いというわけでは無さそうだ。

じゃあ、彼女の対応が気に食わなかった？
確かにあれは褒められた態度では無かったが、礼儀だけで怒る様な人だったかな。

なら……対象者が原因、とか？
いや、それが1番あり得ない。自惚れにも程がある。

うーむ、読心術が欲しいね。生きている人の心情を考えるのはなかなか難しい。
僕は腐っても理系のようだから、ひとまず彼女の性格から分析していこうと思う。
5段階評価で……「鶴崎さん！」

『！？びっくりしたぁ、どうしたの？』

「いやどうしたもこうしたも無いですよ。話しかけてもぜんっぜん反応してくれないのは鶴崎さんの方じゃないですか！」

そんなに熟考していたのか。全く気づかなかった。

『ごめんごめん、ちょっと考え事してた。』
少し笑いながら、そう返す。こうちゃんはあまり納得いってないらしく、不思議な顔をしていた。

「そういえば、最近瑞稀ちゃんめっちゃ疲れてません？」
こうちゃんがふと呟いた。

恐らく微妙になってしまった空気を取り戻すために会話を続けようとしてくれているのだろう。

『そうだねぇ、そろそろ休み取っても良いレベル』

瑞稀さんの事を考えていた矢先に瑞稀さんの話題である。つくづく人気者だ。