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モヤモヤと考えている内に注文していた2人分のビールとチャーハン、須貝さんの分の唐揚げが運ばれてきた。
ここからは音しか聞こえないものの、部屋の隅に設置された壁掛けテレビでは、野球の試合が中継されているらしい。
数分考えてもわからないものは考え続けても仕方がないので、大人しく彼と乾杯してアルコールを体内に入れる。美味しい。
春から飲めるようになったそれは、一口含んだだけで思考や表情を緩くさせる。この得も言われぬ高揚感は、きっと他のものでは感じる事が出来ないのであろう。
自分は酒豪とも下戸とも言えぬ微妙な強さだから、呑まれることは少ない。安心して一杯目は飲むことが出来る。もっとも、判断材料が少ない為正確な値はわからないのだが。
須貝さんは、4分の1ほどビールを飲んでから、大きく息を吐く。良い飲みっぷりだ。
「あー美味っ！やっぱ暑いとビールは美味く感じるね、温帯最高！
さて、本題に入るけど…
ぶっちゃけ瑞稀ちゃんさぁ、鶴崎の事どう思ってる？」
ジョッキをテーブルの上に置いた須貝さんは、大きな目をこちらに向け、トーンを下げて質問してくる。
…いささか本題に入るのが早すぎやしないだろうか。
『良い先輩だと思っていますよ。』
不審に思いながらそう返すと、そうじゃないと言われてしまった。
ならどう返せば良いのだ。いまいち質問の意図が汲み取れない。
須貝さんは『恋愛感情の有無』について聞いていたらしかった。しかし、所謂"恋バナ"なんてもっぱら聞き専だった私に対して、そんな事を聞くのは間違っている様な気がするぞ。どう思うかなんて考えても無かった。
私が答えあぐねて唸っていると、見かねた須貝さんは更に言葉を続ける。
「いや、別に後輩の弱みを握ろうとかそういうのじゃ無いのよ。ただ、俺が気になったから聞きたいだけで。」
『…どう、なんでしょうね。私には分かりかねます。』
画面の向こうで活動していた彼を推しとして見ていた事は事実だ。だがそれが恋愛感情なのかと言われるとまた違うような気もするのだ。話しかけられたら嬉しいし、視界の中にいると緊張するが、それはアイドルなんかでも同じだろう。
そもそも、職場で私情を挟むなんてデメリットしか無いのだ。好きだったとしても、そこでお終いにするつもりである。
そんな事を詰まりながらも須貝さんに伝えると、彼は腕を組み少し考える素振りを見せる。
「んじゃ、まだ好きかどうかはわかんないのね。俺からしてみたら、十分恋する乙女に見えるけどね。」
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作者名：杉山 | 作成日時：2023年1月23日 22時
