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在籍している大学名を口に出すと、同じテーブルにいるある人は目を溢れんばかりに見開き、ある人は衝撃の声をあげる。しかし聞いた張本人である山岸さんだけは
「昔から頭良かったもんね〜」
と、和やかに返答した。
穏やかなのか呑気なのかわからないが、山岸さんのこの性格には我が強い人ばかりが集まる中学時代に随分と助けられた気がする。合唱祭で歌う曲が決まらなかった時、彼女が落ち着かせていなかったら乱闘が起きていただろう。
「そういえばさぁ、東大で思い出したんだけど、ウチらが1年の時3年に濱田って先輩いたじゃん？あの人来年も東北大いるんだってよ。留年かな笑｣
「同じ大学の子に聞いたけど修士課程に行くみたいだよ」
質問した子はへぇ〜、と間の抜けた相槌だけ返していた。あまり伝わってないのかもしれない。それとも彼女にとって噂話は自分が一方的に話せれば満足なのだろうか。
地方の出だと院や博士課程の事をぼんやりとしか認識していない人も多い。ましてや高卒なら尚更。学歴格差が酷いこの地で良く東大に受かったものだと改めて自分を褒め称える。
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《同時刻の東京某所にて》
trsk side
「あれ、今日瑞稀さん休みなの？」
動画の収録を終わらせ、撮影部屋を出ると、瑞稀さんの席が空席であることに気がついた。
「瑞稀なら中学の同窓会に行くって言って地元に帰ってるよ」
彼女と職場で1番親しいであろう須貝さんが僕の独り言にも近い質問に答える。
いつの間に呼び捨てで呼ぶ仲になったんだ。否、須貝さんはそういう人だったね。
少しのジェラシーを感じながら、伊沢さんや福良さんによってそのまま続けられていく会話に耳を傾ける。
「草薙さんってどこの出身だっけ？」
「東北だって言ってたよね。」
そうだったのか。雪とか寒そうだな。日本海側に位置する鳥取で生まれ育った僕も雪は経験しているけど、緯度的にも冬はもっと辛そうだ。
それにしても、さっきから次々と僕が知らない草薙さんの情報が出てくる。僕が知っているのはせいぜい笑った顔が可愛らしいという事くらい。
知ろうとしてなかったのは事実だが、周りが皆知っていて僕だけ知らないのはなんか癪だ。
これはクイズ屋が故なのかはたまた……。
彼女の事を全部知りたくなる…………��
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作者名：杉山 | 作成日時：2023年1月23日 22時
