ただ、君だけ。〈番外編〉(ymin)

＊ ページ16

「……あ、たかき」
「おお、どした？」
「あの、ちょっと相談したいことがあるんだけど……」
「相談……？俺に……？」


雄也、俺のことちら見してくれてありがとう。
気にしてくれたんだな。
でも伊野尾ちゃんのご指名は雄也、お前だ。
２人で会うことに文句なんか言えねぇよ……。


……とまあ、こんな感じで、俺は常に色々考えてしまうわけで。


だからって、仲良くしないで、とは言えない。
やっと前みたいに仲の良いJUMPに戻れたのに、それを壊すような真似出来るわけがない。
てか、俺ってこんなに嫉妬深かった？
自分の中に、こんなドロドロしたものがあったなんて思わなかった。
伊野尾ちゃんに知られたら、嫌われちゃうかもしれない……。


「やまだっ！」
「……ん？」


雄也と話したあとで、俺のとこに駆け寄ってきて。
名前を呼ぶ伊野尾ちゃんに、我にかえって返事をして。
今日、たかきとご飯食べてくるって。


２人なんてダメだ。
それなら俺も行く。


……なんて。
言えたらいいけど。


「珍しいね、雄也と？」
「うん！」
「そっか、了解！
俺も何かテキトーに食べてから帰るよ」
「えへへ、ありがと」


笑う伊野尾ちゃんに、俺は何も言えないんだ。




仕事が終わり。
楽屋に戻ったら俺は帰り支度をしてすぐに出るし、伊野尾ちゃんと雄也は２人で出るだろうから、その前に。


「伊野尾ちゃん、ちょっとだけ」
「ふぁ？」


空き部屋に、伊野尾ちゃんを連れ込んだ。
どうしたの？ってほわほわ笑う伊野尾ちゃんの、唇を塞いだ。


「ふっ、ん、ん……」


伊野尾ちゃんは突然でびっくりしていたけれど、でも、すぐに応えてくれて。
ごめんね、ちょっとだけだから。


「ん……は、や、やまちゃん……？」
「……帰り遅くなるんでしょ？
だから、充電した」
「充電って……夜会えるでしょ！」
「俺はずーっと伊野尾ちゃんと居たいわけよ」
「何それ！やまちゃん可愛いー！」
「可愛いのは伊野尾ちゃんですー」


伊野尾ちゃんのおでこを人差し指で、つん、としたら、そこを手で押さえながらえへへへって、すごく可愛らしく柔らかく伊野尾ちゃんが笑ってくれた。
ああ、こんなの、他のヤツには見せたくないな。

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