罪人(藤日) ページ5
[設定]
ドラマ『そして、誰もいなくなった』藤堂×日下
※ネタバレ注意、切なめ。
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何も知らないというのは、本当に罪なことだと思った。
「瑛治くん俺は……どうすればいい……」
「……新一、く……」
「っ、君を愛してしまった俺はッ……!!
どうしたら、いいんだ……!!!」
強く、熱く、その腕が俺を抱きしめる。
嘆くような言葉と共に。
いつかの夜は、俺が彼を抱きしめた。
それは、彼を懐柔するための手段だった。
実際は彼を殺したいほどに憎んでいたのに。
俺の胸で泣く彼を見て、ひどく苦しい気持ちになったのは、ただの気の迷いだったはずだろう。
なのに今、これはなんだ。
馬場さんも砂央里ちゃんも出掛けていない夜に。
ただ、2人で話していただけなのに。
突然彼は、表情を歪めて。
俺の身体を抱き寄せて。
確かに、愛を囁いた。
「あい、し……え?」
「俺には結婚を考えている女性がいる、なのにこうして君と過ごしていると、心がとても安らぐんだ。
君の笑顔を見ているだけで俺は幸せを感じてしまうそんなこと、あってはいけないことの筈だなのに……俺は、もう君無しでは、いられないんじゃないかと……思ってしまうんだ……」
一息に告げられた想いは、とても、甘く響いた。
……復讐をする、ためなら。
向こうが俺を愛しているなら、俺も応えて、そして、最後に裏切る。
それが、ベストな選択。
相手を絶望に突き落とすダメ押しの1手になる。
「……俺も……新一くんが、好きです。
愛してます……」
「瑛治、くん……本当に……?」
「はい……俺も新一くんと、一緒にいたい」
新一くんの背中に腕を回して、俺も抱きしめ返す。
強く強く、離れたくないと思わせるように。
しばらく抱き合ってから、少し身体を離して俺を見つめて。
目を閉じれば、優しいキスが降り注ぐ。
何も知らない新一くんが、幸せそうに笑う。
婚約者を裏切った男には見えないよ。
俺から全てを奪った男にも、見えない。
新一くんの全てを奪うための計画が、もうすぐ始まる。
俺の人生全てを賭けた、復讐が。
もう止まることなど出来ない。
それなのに。
選択に後悔した。
好きと言葉にしたことを後悔した。
想われて、通じ合えて、嬉しく感じる自分がいる。
……愛する人に愛されることがこんなに幸せだなんて。
彼の残酷な仕打ちに、俺の心は泣き叫んだ。
END.
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息抜き短編。
なのに報われない。
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作者名:りりた | 作成日時:2017年2月18日 13時