＊ ページ14
「大ちゃん麦チョコ食べないの？」
「食べないっ」
「えー……」
拗ねちゃった大ちゃん。
食べてくれないのか。
哀しくて落ち込んだ。
もう、今日何の日か忘れてるの？
「……大ちゃん」
「なによ」
「今日何の日か覚えてる？」
「えぇ？2月14日？」
「そう」
「バレンタイン？」
「そう……」
そう、実はこれ、大ちゃんへのバレンタインのチョコのつもりだった。
もっとお洒落なの用意しようかと思ったんだけど、さすがに混ざれなくて。
バレたら大変なことにもなっちゃうし。
「やっぱさ、女の子のイベントなわけじゃん。
特集コーナーとかには女の子ばっかりでさ。
だから……たまたま、ロケだったし、大ちゃんみたいだなって思えたし……」
勇気だして、買ってみたのに。
これですら、ロケの合間に他の共演者の目を盗んで、カモフラージュに他の駄菓子も買ったりして。
気にしてたのは俺だけだったかもしれないけど、でも、頭は大ちゃんでいっぱいだったんだよ。
拗ねて視線を俺からそらしてた大ちゃんが、こちらを見つめて言う。
「俺のために？」
「うん……」
「駄菓子屋で？」
「バレンタインって気付かれないから……」
「麦チョコ？」
「……確かにこんなんじゃ嬉しくない、よね」
考えてみればバレンタインにこんな駄菓子なんて、ひどかったかも。
もっとちゃんとしたのにすればよかった。
ごめん、って片付けようとしたら、その手を大ちゃんに掴まれた。
そして、ぎゅーっと抱きしめられて。
「嬉しい。ありがと」
「ほんと？」
「うん」
微笑んでくれる大ちゃんの優しさが嬉しくて、俺も思わず笑ってしまった。
さっきまで落ち込んでたのが嘘みたい。
俺は大ちゃんの一言でこんなにくるくる気持ちを変えられちゃうんだ。
後で思ったことだけど。
小さくて可愛いから麦チョコって、言ったんだけどね。
まちがってたかも。
だってね。
ベッドの中の大ちゃんは、すごくすごくカッコいいから。
END.
ウエハースチョコ(ybin.YBside)→←麦チョコ(arin.INside)
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作者名：りりた
| 作成日時：2017年2月14日 4時
