St.Valentine 2017(jump×in) (ページ22)

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これ、と見せたレシピ本には、生チョコタルトの文字。
理由は？と聞かれて、生放送光とやってるから、って。
ちょっと、笑わないでよ。
これなら作れそうだなって思ったんだもん。
もう作れないけど……。

「でも、さっきのでタルトのやつが……」

床に落ちたトレーの方には、市販のタルト生地が乗ってたから。
あと、入れるだけだったのになぁ……。

「そしたらさ、トリュフにしよう？」
「トリュフ？」
「うん、工程はちょこっと多くなるけど、美味しいし形もまるいからさ」

しゃがんだままの俺の視線に合わせるように、光がしゃがんだ。
まるい？ってどういうこと？
まるいのが好きなの？？

「トリュフはね、きのこの方に形が似てるからトリュフなんだよ？
伊野ちゃんそっくりでしょ？(笑)」
「なにそれ！」

ちょっとバカにしてる？って、ぽこん、って殴ってやった。
ひどい、人をきのこみたいに！
俺そんなつもりないんだよ！
でも、みんなそれで覚えてくれるから嬉しいけど……。

「それだけじゃなくて、食べたらやわらかくてとろける感じも、伊野ちゃんでしょ？」
「は……ッ！？」

突然真面目な顔で囁かれて、びっくりしてかたまっちゃった。
なんってこと言うの……！
理解した瞬間顔は真っ赤になって。

「口説きますでは口説けないくせになんでこんな時だけカッコつけんの！」
「伊野ちゃんはべーつ♡」

ほら、やろ？って先に立ち上がって光が手を差し出してきた。
目の前の、なんだかんだ言っても大好きな、その手をぎゅっと掴む。
小さく一応、ありがと、って言った。

光へのバレンタインなのに、光と一緒に作るって、変な感じ。
でも、チョコを溶かしたり、一緒に形にしたりするのはすごく楽しかった。

少し、遅い時間にはなったけど、晩ごはんも一緒に食べて。

チョコはまだかたまってなくて。

待ってる間に、

おれの方がとけるくらいに愛された。

END.