本能(ymin)

＊ ページ20

知念に会いたい。
話を聞いてほしい。
そう電話したら、すぐに答えてくれた知念は、おれを家に招いてくれた。
知念の顔を見たら、もうダメで。
移動中、外では我慢できたのに。
涙なんか止まらない。
知念のこと絶対困らせてるのに、おれはもうただただ泣きじゃくるだけだった。


「いのちゃん……泣かないで……」


ソファに座るおれの背中を、隣に座って撫でてくれる知念。
ごめんね、止まらないよ。


「っ、う、っく……お、おれ、おれっ……」
「うん、聞いたげるよ、いのちゃん。
涼介のことなんでしょ？」
「ッ……ふぇ……、う、ん……！」
「…………泣かせないでって言ったのに」


ポツリと知念が何か言ったけど、聞き取れるほど余裕なくて。
止まらない、抑えられない自分の気持ちが自然とぽろぽろ零れ落ちる。


「おれ、おれわかった、分かったの、やまだ……ひっ、く……おれ、ッは、やまだ、好き、好き……ッ！！」
「うん、分かってるよ。
いのちゃんが涼介のこと、大好きなの、僕は知ってるから」
「ッ……で、も、やまだ、は、おれの、気持ち……言わせても、くれないッ……！！」
「……いのちゃん……」


いい大人が、恋愛でこんなに泣くなんて。
でも、胸がいたくていたくて。
苦しくて。


知念が、そっと抱き寄せてくれた。
見た目と違って、ガタイのいい知念の体。
……やまだと、同じくらい。
ぎゅって、抱きついて。
思いきり、泣いて。
そのまま、眠ってしまった。







「…………かじゃないの！！」
《…………………！！…………………！！》
「いのちゃ……もち、かんが……！！」


ん……何か、きこえる……？


「あーもう、ホントバカなんだから！！！」
「……ちねん？」


目が覚めて、声の方を見たら。
知念が凄い顔で電話に怒鳴ってた。
びっくりして、小さく声をかけてみる。


「あ、いのちゃん、目ぇ覚めた？」


ピッ。


え、明らかに通話中だったのに。


「あの、電話……」
「いいの、しょうもない電話だから。
それよりいのちゃん、これ、タオル濡らしたから、目冷やして？」


素直に、目の上に渡されたタオルを乗せた。
あ、気持ちいい。


「いのちゃん明日仕事？」
「ん……午後から……」
「そっか。
じゃあ、それまでに腫れが引くといいね」
「うそ、腫れてる？」
「まぁあんだけ泣いたらね」


苦笑する知念。
そうだった、めちゃくちゃ泣いたんだ。
そんで泣き疲れて寝るってどんだけ子供だよおれ！

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