＊ ページ10
「……切れちゃう、くち」
「ッ、」
「ねぇやまだ、そんな痛そうな顔しないで？
おれ、大丈夫だから。
女は捕まったし。
あの時の女の妄言を、真に受けたりしてない。
さっきはああ言ったけど、自分に非があったわけじゃないんだってことは分かってる。
ちゃんとスタッフさん確認したりとかしてるし、それこそファンの子みんながそうってわけじゃないことも、理解してる。
ちゃんと、乗り越えてる。
……ただね。
１つだけ、乗り越えられないことが、あって」
そう言うと、伊野尾ちゃんが、とても哀しそうに微笑んだ。
「おれ……あんなに、大好きだった……
“食べる”ってことが……怖くなっちゃった……」
伊野尾ちゃんの瞳から、一筋の涙が、零れ落ちた。
「頑張って、頑張って、今、やっと、少し食べられるようになったけど……でも、ダメなの。
人が作ったご飯、怖くて食べられないの。
どんなに信じてる相手でも、何か入ってるんじゃないかって怖くて、そうやって疑う自分がすごく嫌だし、もし態度に出てしまったら、相手を傷つけるんじゃないかって、それも怖くて。
誰かの、手作りのご飯がね、食べられないんだ……」
もう、微笑む余裕は無くなっていた。
ぼろぼろと泣きながら、伊野尾ちゃんが訴える。
「……ご飯屋さんに行っても、みんなとシェアしながらじゃないと、食べられない。
仕事場のご飯も、収録中に出るものだけは、みんな見てるから大丈夫って、言い聞かせて食べてるけど、楽屋とかは１人じゃ絶対食べられない。
コンビニやスーパーのものは、元々誰が手に取るか分からないものだからって思うことで、やっと食べてるぐらいで。
……最近は忙しくて、自分で作る暇もあんまし無くて、コンビニの健康補助食品で食い繋いで……」
おれ、食べることが、こんなに、苦痛になるなんて思わなかった。
そう言って伊野尾ちゃんはとうとう顔を手で覆って、泣きじゃくり始めてしまった。
ひっく、ぐす、と嗚咽が零れる。
そんな伊野尾ちゃんに、掛ける言葉なんて持っていなかった。
怖くないよ、大丈夫だよ。
そんな言葉はただの気休めにしかならない。
伊野尾ちゃんが抱えてる大きな傷を、俺は、癒すことが出来ない。
何も出来ないのか。
こんな、こんな伊野尾ちゃんの姿を知って、俺は何もしてあげられないのか。
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りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
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