＊ ページ49
「……だい、じょぶ……」
「うそ……」
「やまちゃん、美味しい……すごく、美味しい……！！」
「吐きそうじゃない？お腹痛かったり、どっか、苦しかったり、」
「ぜんぜん、大丈夫……！
おれっ、やまちゃんの、ごはん、っおいしいって、たべれる、食べれるよぉ……！！」
涙腺が崩壊したかのように、伊野尾ちゃんの瞳から涙が溢れる。
今までお互い流さないように我慢していたのに、ダメだった。
俺も、一緒になって泣いた。
「よかった、よかった伊野尾ちゃん……！！」
「うんっ、だって、おれ、っく……やまちゃん、信じてるから、だからっ、」
「わかってる、ほんとに、よかった……！！」
椅子に座ったままの伊野尾ちゃんの顔が、ちょうど俺の胸に埋まる。
包むように抱きしめて、泣きながら、喜んで。
伊野尾ちゃんが、ぎゅうぎゅうと力を込めながら、俺の知らなかったことを告げる。
「っく、ぅ、ひっく、おれ、肉じゃがの日いっつも泣いてる気が、する……」
「そう、なの？」
「うん、最初のやまちゃんの時も、……1回だけ、自分で作ったことがあったけど、その時……全然、美味しくなくて……」
「……失敗した？」
「レシピ通り作ったよ、だけど、だけどね、やまちゃんがいないだけで、全然、味がしなかった……」
だから、分かったの。
やまちゃんがいないと、ダメなんだ、って。
「いっぱい、泣いた、哀しかったし、寂しかった。
でも、今日のは、うれしくて、っ、おれ、やまちゃんが、すきだよ、だいすき、っぁ、んぅっ、！！」
想いをこんな風にぶつけられて、我慢なんてできなかった。
伊野尾ちゃんを上向かせて、その唇を塞いだ。
柔らかさを味わいつつ、歯列を割り舌を侵入させ、絡みとって、上顎もなぞって、もう、息もできないくらいに。
唾液も飲み込めないのか、口の端から零れるのが、堪らなく唆り、少し離れてもまた塞いだ。
どのくらい味わったのか、やっとちゃんと離れれば伊野尾ちゃんが、ぽーっとしながら、肩で息をする。
とても、愛しかった。
彼を再び抱きしめ、想いを囁く。
「これからも、美味しいものたくさん作るよ。
たまには2人で一緒に作ろう。
伊野尾ちゃんのおなかが、いっぱいになって、
もう、倒れたりなんかしないぐらい。
ずっと、傍にいる。
隣で、一緒に笑って暮らそう。
……愛してる」
伊野尾ちゃんのおなかが、くぅ、と鳴き声を立てるまで。
俺たちはずっと、互いの温もりを感じていた。
END.
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りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
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