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伊野尾ちゃんが出ていってからは、何もする気が起きなくてそのままだった部屋。
毎朝のようにしていた掃除も、やる気が起きずおざなりになっていた。
だけど、伊野尾ちゃんと一緒に帰ると決めたその日にめちゃくちゃ掃除した。
綺麗な部屋で、出迎えたくて。
「……やまちゃん？」
「伊野尾ちゃん、これ」
部屋の前で立ち止まった俺に、伊野尾ちゃんが首を傾げる。
俺は伊野尾ちゃんの左手を取ると、手のひらの上にある物をのせた。
「これ、って……」
「この家の、カギ。
伊野尾ちゃんのだよ」
「……おれ……いいの？
また、やまちゃんの家で暮らしても、」
「俺の家じゃない。
これからは、俺と伊野尾ちゃん、2人の家だよ」
「っ、……」
伊野尾ちゃんは息を呑み、青いリボンのついたこの部屋の合鍵を、反対の手で撫でた。
その手は、少し震えていて。
「開けて、伊野尾ちゃん」
「……う、ん……」
大事なものを扱うように、優しく持って、目の前の扉に差し込んだ。
ゆっくり回すと、カチャリ、と音がする。
カギを抜き、握りしめて。
伊野尾ちゃんが、扉を開けた。
今にも泣きそうな伊野尾ちゃんの顔。
悔しいことに俺より少しだけ高い位置にある頭を、ぽん、と撫でてから、伊野尾ちゃんより先に、1歩部屋の中に足を踏み入れた。
それから、扉を開けたまま固まってる伊野尾ちゃんの方を向いて。
「おかえり、伊野尾ちゃん」
そう言って笑うと、伊野尾ちゃんは、涙を瞳に溜めながら。
「……っただいま、やまちゃん……！」
そう言って、笑って。
中へと、足を踏み入れてくれた。
やっと、本当に帰ってきた、そんな気がした。
「ほら、出来たよ」
「ありがとう、ワガママ言ってごめんね」
「こんなのワガママに入らないから。
むしろ大丈夫？俺が一から作ったもので、本当に良かったの？」
「うん、やまちゃんの手料理が、食べたかったから」
伊野尾ちゃんの希望で、晩ご飯は俺が1人で作ることになった。
メニューは、肉じゃがとみそ汁。
それがいいと、頼まれたから。
お互いダイニングテーブルに座ると、以前のように、俺は目の前で先に食べようと箸を持った。
「待って」
「え？」
制止されて、伊野尾ちゃんを見れば、伊野尾ちゃんも既に箸を持っていて。
いただきます、と呟き、小さめのお肉をひとつ取ると、そっと口に運んだ。
「ちょっ！？」
慌てて席を立ち、伊野尾ちゃんの横に駆け寄る。
伊野尾ちゃんは、ゆっくりとそれを飲み込んだ。
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りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
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