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「それで、どーしたの?」
「……うん」


何も知らないいのちゃんは、優しい声で僕を促した。
僕は、躊躇いながら。
でも、面と向かって。
本題を切り出した。


「……僕、ずっと好きだった人がいるんだ」
「へぇ〜、そうなんだ!
だれだれ?おれの知ってる人?」


好奇心でいっぱいの、いのちゃんの表情が。
次の僕の発言で凍りついた。


「……涼介」
「………………え………………」
「涼介、なんだ。
僕、ずーっと、涼介のこと、好きだったんだよね」


開いた口が塞がらないみたいで、そのままいのちゃんは、止まってしまった。
ムリもないよね、こんなの。
聞かされたらショックを受けるのは分かってた。


「ウ、ソ……」
「…………」
「あ、あの……おれ……やまちゃん、と……」
「……うん、そうだね」


いのちゃんの目がうろうろとさ迷う。
どうしていいか、どう答えていいか分かんないって、そう伝わってくる。


「っ、ごめん、そんなこと、知らなくて、おれ、本当にごめん……!!」


謝るいのちゃんに、ちょっとだけムカついた。


なに?ごめんって。
僕から涼介を取ってごめんってことなの?
涼介がいのちゃんを選んだんだよ。
僕は、謝罪が欲しいんじゃないんだ。


何も言わない僕に、頭を下げて謝罪だけを繰り返すいのちゃんに止めるように言う。


「謝るのやめてよ」
「っ、……ごめ……」
「…………じゃあ、僕が許さなかったらいのちゃんは僕に涼介をくれるの?」


いのちゃんの肩がビクンッ、と震えた。
いじわるな言い方。
分かってる。
余計なお世話なことも。


だけど、いのちゃんが、もしも。
事件のことで、怖くて、それで傍にいた涼介に恋をしたと思い込んでたら。
もしそうなら、この先には哀しみが待ってる。
そんなの2人にとって1番良くない。


それに、これが分かったら僕は、本当に涼介を諦められると思うから。
諦めるための、きっかけが欲しくて。
あんな目に遭ったいのちゃんに、酷いことを言ってる。
……ごめんね、いのちゃん。


「僕が涼介を好きなのに、いのちゃんが取っちゃってごめんってことならさ。
僕に譲って、って言ったら涼介をくれる?
いのちゃん、涼介のこと手放してくれるの?」


畳み掛けるように尋ねる。
いのちゃんは、頭を下げたまま、体を震わせて、また、謝罪を口にした。

*→←IF02:バイバイ。(cn→ym)



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りりた(プロフ) - とびっこさん» コメントありがとうございます、すごく嬉しいです!最後まで描けてよかったなと思います(*^^*)これからも頑張りたいと思います、よろしくお願いします! (2019年1月5日 17時) (レス) id: 068b0a2ee5 (このIDを非表示/違反報告)
とびっこ - 素敵なお話ありがとうございます。心が暖かくなるお話でした!山田君といのちゃんが好きなので嬉しかったです。こんな優しいお話がかけるということは、作者さんがたいへん心優しい方なんだなと思いました。これからも応援しています。ながながとすいませんでした。 (2019年1月1日 21時) (レス) id: bc899b6d8f (このIDを非表示/違反報告)
とまとねこ。(プロフ) - りりたさん» 全然大丈夫ですよ!気にしないでください!すごく楽しかったです!これからも応援してます!! (2017年6月29日 21時) (レス) id: e11089ce95 (このIDを非表示/違反報告)
りりた(プロフ) - とまとねこ。さん» とまとねこ。様、直接ご連絡出来ずに申し訳ございませんでした!本当にお待たせしました、楽しんで頂けたのなら幸いです!リクエスト本当にありがとうございました! (2017年6月29日 15時) (レス) id: 617a50f5a2 (このIDを非表示/違反報告)
とまとねこ。(プロフ) - 本当に本当に素敵なお話たち有難うございます。みててすごく幸せになれました!リクエストたくさんあったのに全部受けて頂き本当にありがとうございました。これからも陰ながら応援してます! (2017年6月29日 9時) (レス) id: e11089ce95 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りりた | 作成日時:2017年5月16日 2時

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