ただ、君だけ。〈IF〉(ymin)

＊ ページ3

「……一見、いつもの伊野尾ちゃんの笑顔だけど。
俺には分かるんだよ。
何か我慢しなかった？明日のこと？」
「あ…………」


ああ、やっぱし。
やまだには、隠せないんだ。


「俺だけ遊びとか、やっぱあんまよくないかな……」


呟くようにやまだが言うから、おれは慌ててそれを否定する。


「ううん、だって、それはいいの。
遊ぶのとか普通だし、おれは、そんな束縛をしたいわけじゃないの。
みんなと会話してた、さっきの様子がね？
仲良いなぁって、それは良いことだし、ただ、ほら、おれは入れないなぁって、もやもやしたと言うか……」
「伊野尾ちゃん、まさか仲間外れにされたとか思ったのならそれは絶対違うからね」
「や、あのちがくて、そうは思ってないよ。
あの、だから……」


今までのことがあるから、やまだも真剣な声。
ああ、違うのに、そんな重い感じじゃないよ。
一生懸命考えて、そしたら、さっきまで自分でも分かってなかった感情を引き出される。


「だから、あの……。
やまだが楽しそうなのは、ね、すごいおれも嬉しいの。
ただ、ちょっと、いいなぁって思っただけなの。
いつもずっと一緒にいるのに、メンバーと絡んでるやまだ見てたら、なんだろ。
こう、変なもやもやがあるっていうか。
あの、寂しいっていうか……。
おれのこと見ないかな……って思っちゃったというか……恋人なのにな、っていう……」


声に出して、初めて気付いた本音。
わがままにもほどがあるよね。
ずっと一緒にいるくせに。


重いヤツだと思われたかなと落ち込んで、俯いてるおれ。
でも、やまだからの返事はないから、不安で。
ちらりと窺い見てみると、やまだは、横を向いたまま、おれに顔を見せてくれなかった。
でもちょっと笑ってるような気がする。
それと、こっち側に向いてる耳が……真っ赤。


「やま、だ？」
「いやあの……不意討ち食らった……」


ふいうち？
首を傾げて尋ねても、やまだは答えてくれなくて。
何だよ、どういうこと？


「あの、なんか変だった？」
「いや……変とかじゃなくて」


やまだが、おれに向き直った。
まだちょっと笑ってるし。


「なんで笑ってんだよぉ」
「ちがうちがう、なんていうかさ、嬉しかったんだよ」
「……はぁ？」
「伊野尾ちゃんの話が嬉しくて、照れちゃって赤くなっちゃったんだよ」


どこにそんな要素あったんだろ。
よく分かんない。
また首を傾げてみた。

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