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「っ、おれぇ、つらいの……つらいっ……」
「つらい?伊野尾、どうし、!」
とろんとした瞳から、涙が溢れていた。
はらはらと流れ落ちるそれを拭うこともせず、俺の胸のあたりの服を、全然力の入っていない両手で握って、必死に訴えてくる。
「つらい、って、何かあったのか?
伊野尾、大丈夫か……?」
ぽんぽん、なでなで。
俺もどうしたらいいか分かんなくて、とりあえず頭を撫でて。
そしたら伊野尾は、更に表情を歪めてしまった。
「っ、き、すきぃ……」
「え……?」
「あいばくん、あいばくんが、すき、なの、ごめんな、さい、ごめんなさい……」
それは突然で。
切羽詰まったような声で、絞り出されたそれは。
たぶん、伊野尾がお酒の力を借りて紡いだ、本音。
「好き、って……ウソだろ……?」
「っ、ごめんな、さい、わかってる、言っちゃだめって、分かってます、でも、すきなの、あいばくんが、すきなの……。
だから、やさしい、と、つらい、やめて、でも、やめないで、って、おもって、」
優しくされると、つらいんです。
でも、好きなんです。
好きになって、ごめんなさい。
呂律が回っていないし、語順もめちゃくちゃだけど、要約すればこういうこと。
これを、ずっと俺に伝えながら、泣いている。
「伊野尾……お前……」
「っく、ひっ、うぅ……っ、す、きぃ……」
「っ、分かった、分かったから……な?」
泣きじゃくる伊野尾を、抱きしめた。
頭を撫でながら、少しでも落ち着くように。
コイツは、もう限界だったんだ。
俺のこと、こんなに好きになってくれて。
でも伝えられなくて、苦しんでたんだ。
いつから、想ってくれていたんだろう。
こんなに、泣かせてしまうのなら。
さっさと俺も同じ気持ちだと、伝えてしまえばよかった。
「伊野尾、聞いて?
ね、俺も伊野尾が好きだよ、だから、もう泣かなくていいんだよ」
「ふぇ、っ、く、うそ、うそ……」
「ウソじゃないよ」
「う、うそ、らって、あいばくん、やさしーから、うそだもん、」
首を振って俺の言葉を信じない伊野尾。
ウソじゃないと、証明するにはどうしたらいい?
単純な俺には、これしか思い浮かばなくて。
頭を撫でていた手を伊野尾の濡れた頬に添えて、上に向かせて。
その柔らかい唇に、そっと、触れるだけのキスをした。
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叶夏(プロフ) - 初めましてではないんですが、こんにちは!w私はこの小説の移行が楽しみです! (2017年8月31日 16時) (レス) id: 2cc78d7855 (このIDを非表示/違反報告)
りりた(プロフ) - 龍香さん» 初めましてこんにちは、コメントありがとうございます。ご感想とてもうれしいです(*^^*)ありがとうございます、頑張ります! (2017年8月29日 11時) (レス) id: 068b0a2ee5 (このIDを非表示/違反報告)
龍香(プロフ) - こんにちは!初めまして!この作品を何回も何回も見直して楽しんでいます。他のグループと、伊野ちゃんのコンビを見ることがあまりないのでとても楽しいし、尊敬します!これからも頑張ってください! (2017年8月28日 19時) (レス) id: 0ce171944b (このIDを非表示/違反報告)
りりた(プロフ) - りんこ@801さん» こんばんは、りりたです!先日はリクエストありがとうございました(*^^*)あ、そうですおわ恋と同じりりたです(笑)そちらもお読み頂けて凄く嬉しいです!ありがとうございます、ちょっとだけささくれ立ってしまった心が落ち着いたら再開したいと思います…(・_・、) (2017年8月12日 0時) (レス) id: 068b0a2ee5 (このIDを非表示/違反報告)
りんこ@801(プロフ) - 色んなCPをこんなに丁寧に書いてくださる方も見たことがないので、もっと沢山のCPに挑戦して欲しいな…なんて。個人的には、生田アナ、立本アナ、中村アナの三つ巴!くらいしか思いつかないし笑これからも頑張って下さい、応援してます。 (2017年8月11日 18時) (レス) id: afb91c03e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りりた | 作成日時:2017年3月30日 15時