イロイロあつめました。(×in)

＊ ページ35

「ふ、ま、あの……」
「……何すか。
ほら、早く戻りなよ」
「えっ、」


伊野尾くんの腰を両手で掴んで、風磨の膝から降ろして。
伊野尾くんは風磨の目の前に立ったまま、どうしていいのか分からずにいる。
帰らなきゃならないのは本当なんだろうけど、でもここで帰ったら風磨が機嫌を損ねたままだから。


長い前髪の隙間からちらりと覗く眉が八の字で、マジの困り顔。
可哀想な伊野尾くん……。


「ふーま……あの、ごめ……」
「何が？
伊野尾くんの言うとおりにしただけじゃん」
「っ、ちがくて、離れたいわけじゃなくて、だから、みんなの前は、恥ずかしいっていうか」
「分かったって、俺に触りたくないんだろ」
「ち、ちがうんだってば……」


聞き入れない風磨に、少し涙目の伊野尾くん。
ソファに座る風磨の前にしゃがみこんで、俯く風磨の顔を覗きこむ。


「ねぇ、おれだって風磨と一緒にいたいよ……。
でも、これから仕事だし……終わったら、おれん家にかえろ、ね？
だから、お願い、機嫌直して……？」
「……分かった」


必死の説得に、風磨が渋々といった感じで返事をして。
ホッとしたような顔の伊野尾くんだけど、風磨がその後、“ただし”と続けた。


「キスしてよ、伊野尾くん」
「ふぇっ！？」
「今、ここで、キスしてくれたら。
俺、機嫌直します。
この後もめっちゃ頑張るし、伊野尾くんの家まで我慢します」
「っ、！」


覗きこんでいた伊野尾くんの頬に触れて、真剣に告げる風磨。
いやここ俺たちの楽屋でメンバーみんないるって何回言わせんだよ。
しかも松島とマリウスっていう未成年いんだぞ。
伊野尾くんはもう顔真っ赤だし。
さすがに止めるべきだろうと思ったんだけど。
それより早く、伊野尾くんが動いた。


意を決した表情で、風磨に、触れるだけのキスをしたんだ。
ちゅ、と響いたリップ音に、全員固まるしかない。


「もっ、もうおれ行くから！！
あとでねっ！！」


顔を赤くしたまま、バタバタと楽屋から出ていく伊野尾くん。
残された俺たちは固まったままで、でもその中で最年少のマリウスが呟く。


「……ラブラブ、だね？」
「いやそこじゃないでしょ」
「俺、こんな間近でちゅー見たの初めてかも」
「聡もマリと一緒か！
だからそこじゃないってば！」


心配していた未成年２人組に、勝利がツッコミをいれてる。
歳の近い割にしっかりしてる勝利に２人のことは任せ、俺は風磨に近づいた。

＊→←スマート彼氏(fmin)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す