イロイロあつめました。(×in)

誘い文句には意味がある(cbin) ページ1

『千葉くん、飲みに行かない？』
『ねぇねぇ千葉くん、飲もうよ！』
『飲みに行きたいんだけど、暇だったりとかする？』


時にはメールで。
時には電話で。
伊野尾ちゃんがお誘いをしてくれる。
俺は伊野尾ちゃんが好きだから、それはすごく嬉しいことなんだけどね。


「ねぇねぇ伊野尾ちゃん」
「ふぁ？」
「伊野尾ちゃんってお酒苦手だよね？
何でいつも飲みにいこうよって誘ってくれるの？」
「え……」


今日もまた、個室居酒屋で飲んでるけど。
俺なんてさっき日本酒頼んだのに、目の前の彼はグレープフルーツジュースとかウーロン茶とかばかり。
飲みにいく、って基本お酒でしょ？
だから不思議に思って聞いたんだけど、そしたら何を勘違いさせてしまったのか、彼は俯き落ち込んでしまって。


「誘って、欲しくなかった……？
ご、ごめん千葉くん、付き合わせて……」
「えっ、や、ちがうちがう、そうじゃなくてさ、ご飯行こうとかでもいいのに、なんでいつも飲みに行こうって言うのかなって」


伊野尾ちゃんって、後ろ向きに捉えてしまうところがあるのかな。
まぁ俺の聞き方も悪かったけど。
改めて聞いてみたら、ぱちぱちと、まばたきして、途端に伊野尾ちゃんの視線がうろうろし始めた。


動揺してる……？


「伊野尾ちゃん？」
「や……え、っと……」


口ごもる伊野尾ちゃん。
そんなに答えづらいこと聞いちゃった？


「あの……千葉くんが、お酒、好きだから……」
「……ん？」


小さく答える伊野尾ちゃんに、思わず聞き返してしまった。
え、どういうこと？
俺が酒好きだから？


疑問を浮かべたまま伊野尾ちゃんを見つめていると、突然顔を上げた伊野尾ちゃんは、俺のことをじっ、と見つめてきた。
な、何だろ？


……ていうか、ちょっと、泣きそうになってない？
顔赤いし瞳うるうるで本当に可愛いんだけど、どうしよう。


「……あの、おれ……！！
千葉くんと、一緒にいたくて……！！」


必死、という感じで訴えてくるけど、ちょっとまだ分からないよ、どう繋がるの？
俺といたい、だなんてすごく嬉しいんだけどさ？


「た、ただのご飯より、お酒飲もって言って誘った方が、千葉くんが来てくれるんじゃないかと……おもって……。
浅はかな、考えかもしれないんだけど……でもおれ、千葉くんのことがす……ッ！？」


やっと、話が繋がって。
同時にそんな可愛いこと言われて。
我慢できなかった。


テーブルに身を乗り出して、伊野尾ちゃんの唇に触れた。

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