あつあつのフォンダン・ショコラをあなたと 1

11　謎の老人 ページ11

大変なことになった。



『 バイトじゃなく、いきなり社員に 』

って。

本気なの？



ちょっとからかってやろうって、

世の中そんなに甘くないってことを教えてやらなきゃって。


まさかそーゆーこと？



でも面白い、

ワクワクしてきた。



だったら、

やってやろうじゃない！



私が凄いんだってこと、

ゆうさんにアピール出来る大チャーンス。




さっき、

作るのに時間がかかるって話してたから、

今のうちに素材集めをしなくては。




どうしよう？



ここはやっぱ、

生の声を聞くのが大事かな？




『 いかがですか ? 』



ただそれだけのシンプルな質問を、

店内にいるお客さんに片っ端から聞いていく。



そして、

店内中の写真もあらゆる角度から撮りまくって。






「な(笑)。

この店、面白いだろ？」




店内の一番奥で、

１人で佇(たたず)む老人にいきなり声をかけられた。




「ゆうちゃんと知り合いか？」


A「いえ、今日が初対面、私はここで働く姉の妹です。」


「もしかしてヨナさんの？」


A「はい、よく姉をご存知で(笑)。」


「で、ここで働くのか？」


A「いえまだ、決まったワケではありません。

さっきゆうさんから課題を出されました。

それが成功すればの話です。」


「そうか(笑)、上手くいくといいな。」


A「はい、ありがとうごさいます(笑)。

ところで、あの…」


「な、なんだ？」


A「どうして、こんな若い女性ばかりが集まるカフェに、おじいちゃんがいらっしゃるんですか？」


「気になるか？」


A「はい、とっても。」


「じゃ、教えてやろう。

わしはな、ゆうちゃんに心底惚れとってな。」


A「えっ？」


「はっはっは、何を勘違いしている？

人間的にっていう意味だ。

ゆうちゃんはな、いつだって真っすぐで一生懸命なんだ。

ゆうちゃんだけじゃない、君のお姉ちゃんもここで働いてる子達もみんな、とにかく一生懸命なんだよ。

おっと、もうこんな時間。

じゃ、そろそろ行くかな、よっこらしょっと。」



杖を支えにしながらゆっくり立ち上がると、

お会計もしないでそのまま外に出て行ってしまった。



なんだ、

ただの冷やかしか。

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