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ただ、おかしな人ばかりだなあ、ということをちらっと考えただけで終わった。最も、神に仕える者を侮辱したというのに、それに怒らない母親に対しては、特に強い疑心を持ったが。ともかく、ういはそれを了承し、明後日には荷物をまとめて出ると言った。
ういは幼少期から、父方の祖父に薙刀を習っていた。最初は乗り気ではなかったういだが、なんだかんだ言っても13年ほどは続けていた。親族の中で、唯一仲の悪くなかったのが祖父だった。もしものときは、ういが身体の弱い姉を守れよと、いつも祖父はういの頭を撫ぜながら言った。そのためだけに習わされた薙刀術。それなのに、今ではういの強い思い入れのあるものとなっている。薙刀を教えてくれ、自分を可愛がってくれた祖父が自分のことを鬱陶しいと本気で思うことはあるはずがないことを、ういは分かっていた。ういは喋りが過ぎるな、だとか、鬱陶しいから静かにしろ、などと言われたことは何度かあったが、それでも祖父の場合は「まったく愛い孫だな」、と続くのだから。そして、ういだけに、とふざけて言うと、祖父は楽しそうに笑うのだ。それが、神社を出ることになったときから、今後はもう会うことすら無いのだろうと思うようになると、何となく心寂しい気もした。
姉と祖父には言わないでくれ、と母に口止めされていたから、姉にも、祖父にも、出る前に会ってはきたものの別れを告げることはできなかった。ただ、祖父にはもちろん、あまり話をしたことのない姉にも礼を告げ、そそくさと神社を後にした。行き場のないういは性格上途方に暮れることはなかったが、周囲から向けられる奇異の目はなんとなく気になりはしていた。巫女装束は肩の出る格好になっており、頭に結ばれた大きなリボン。こんな格好であれば、目立つことは明らかである。人混みを避けつつ、その日は宿に泊まろうかと考え、町を歩くうちにとある貼り紙を見つける。それに書かれた文章を読み、ういは運命を感じた。『つわもの求む』。巫女でない自分には、もう薙刀しかない。逆に言えば、薙刀があるのだから活用すべきだということ。きっと、神様がワタシを導いてくださったのですね。
ういはこの出来事に感銘を受け、その場で亜修羅隊に入ることを誓った。崇めるものが違ったとして、良い顔をされなかったとして‥そんなものはういにとってはどうでもよかった。ただ、居場所と、認められる強さがあれば。そうして、めでたく亜修羅隊の一員となったういは、今日も元気よく薙刀を振るう。
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