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#2ー3
◇◇◇
「お前…松田じゃなくて松田さんだろ。熱だと敬語も抜けんのかよ」
閉じていた目を開いてキョトンと首をかしげるAに松田はため息をついて前髪をくしゃりと掴む。
「でも、懐かしい…引っ越したかと、思ってた、や」
「…………………は?」
訳の分からない一言。
違和感に気づいて顔を上げた時には、Aはすでに眠っていた。
松田は眉間にしわを寄せて眠りに落ちた少女の寝顔を見つめる。
証拠もなにも有りはしなかったがその言葉は松田にとって何を示すか理解するには十分過ぎるものであった。
「………………引っ越すわけねぇだろ。俺は待ってんだよ馬鹿野郎」
誰に向けていったかもわからない言葉に返事をする者はいない。
松田は静かに部屋を後にした。
外では酷い雨が降り続けていた。
「いっ…ここ、何処…………確か昨日松田に助けてもらって…」
懐かしいベッドのシーツを撫でながら失言をしていないか昨晩の事を思い出す。
(腐っても警察とか優しいとかそんな会話くらいだったような…)
まぁ大丈夫だろうと荷物をまとめてリビングに出る。
「お、はよう…ございます」
「おう」
新聞を広げてタバコを吸っていた松田が視線を上げた。
「もう大丈夫なのか」
「はい、助かりましたありがとうございます」
深々と頭を下げるAを松田は目を細めて見つめる。
「帰んのか」
「それは、まぁ…今日は家できちんと休むつもりです。ベッドごめんなさい。あと、その……」
「酒だろ?言わねぇし、首は突っ込まねぇ。見なかったことにしてやるよ。ただ」
「ただ…?」
「親に言えねぇ生き方はすんじゃねぇぞ」
「!はい…ごめんなさい………それじゃあ私帰ります」
玄関へと向かうAの後ろから見送りか松田もついてくる。
「ありがとうございました。お礼は後日。失礼します」
またも深々と頭を下げるAを松田は無言で見つめる。
「引っ越さねぇからな」
「?それは個人の自由だと思いますけど…」
訳がわからないと眉を寄せるAに松田は小さく笑って続けた。
「雨宿りしたけりゃいつでも来いって事だよ馬鹿野郎。じゃあな」
それって女子高校生連れ込みでヤバくないですかと返す前に松田は家の中へと戻って行ってしまう。
私は舌に乗った嫌味を飲み込んで一礼して懐かしい部屋を後にした。
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黒木(プロフ) - 毬莉さん» コメントありがとうございます、一気読み!?嬉しいです、今後とも本作をよろしくお願いします! (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - りーさん» ありがとうございます、嬉しいです。更新致しました、読んでいただけたら幸いです、 (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - リオさん» こちらこそコメントありがとうございます!正解です!!キャラが関わるほどではなかったのでクロスオーバーのタグ等はないのですが、誰か気がつかないかな〜なんて思って書いたんです。ありがとうございます! (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - もってり子さん» ありがとうございます。嬉しいです、更新致しました、楽しんでいただけたら幸いです! (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - 液体さん» コメントありがとうございます!更新致しました、読んでいただけたら幸いです (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒木 | 作成日時:2019年8月23日 17時