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最初はグーじゃんけんポン
「降谷って実は心読めたりする感じ？」
私は自分の出したチョキを見つめる。
「たまたまだよ」
そう答える降谷に引っ張られながら電車に乗り込む。
今度は青色の電車だ。
微冷の号車に腰掛け揺られる。
ふと、途中で乗り込んできた中年のおばさんが私のガーゼをじぃっと見つめてきた。私はそっと目を逸らしなんの気なしに爪先を見つめる。親指の付け根の甘皮を人差し指で引っ掻くのを繰り返していたらそっと降谷の左手が私の手にかぶさった。優しく咎めるように人差し指を外されしっかりと握られる。
何故だか降谷は怒っているようで、その理由が私には分からなくて怖くて、そっと目の前のおばさんを盗み見た。おばさんは私の視線には気づかず、降谷の方をぎゅうっと目細めて見て、それか眉を高く上げて何事もなかったかのように目を閉じた。
それからも手は外されることなくしっかりと繋がれていて、降谷の手が温かいから、そのまま微睡みの中に沈んでしまった。
気がついたら私も降谷もすっかり眠りこけていて、私たちは終点で揺り起こされて目覚めた。
なんとなく改札を通って出る。
それからは出来るだけ遠くへ歩いた。
駅から逃げるように、離れられるように、そうして行くと次第に海が見えてきて、私たちはそこへ向かって走り出した。
「海だーすごい、降谷、海だよ！！私初めて！」
靴を脱いで砂浜へ駆け出す。
夕日に温められてぬるい海水が足首にまとわりついては離れを繰り返した。
「ねぇ降谷、………降谷？」
いつの間にか砂浜には自分一人で、私は慌てて周囲を見回す。
そして誰もいないのを確認すると元来た道へ急いで戻った。
バシャバシャと海を蹴って走る。
「ふ、降谷！」
「永江！」
パシリと腕を掴まれて振り返ると驚いたような顔をして降谷がいた。
「あ、ふる、や」
「どうした？どこへ行くんだ？」
「あ…降谷こそ、どこに」
「飲み物買ってたんだ。脱水するといけないから」
私は降谷の右手にある二本のペットボトルを見つめて首を振った。
「振り向いたらいなかったから…」
声が震えたのに降谷は肩で反応して私のことを抱き寄せた。
「いるよ、ちゃんといるから。大丈夫、置いて行ったりしない」
トントンと背中を叩かれて私はそっと降谷から体を離す。
「ごめん、ありがとう」
気遣わしげに眉を下げる降谷に笑いかける。
「靴、とってくる」
自分から伸びた影と競争するように靴を置いた場所へと走った。
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Lailah(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです。テーマの作品2つにも納得が行きました。その後の話も見てみたかったですがこれはこれで良かったです。良き作品を見せてくれてありがとうございます。 (2021年7月5日 12時) (
レス) id: 59f1e2127c (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - とても素敵な作品で、泣いてしまいました(笑)続きを作ってくださるのなら、楽しみにしています！ (2021年5月6日 19時) (レス) id: 2fea210edb (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - ↓ごめんなさい誤字です。正しくは「楽しく読ませていただきました。」です。 (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - とても素敵な作品で、楽しく読ませてました。これから二人はどうなるのか、続き楽しみにしてます！頑張ってください！ (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - とても素敵なお話でした。読むのが止まらずあっという間に読み終わってしまいました。 続きが読めるのを楽しみにしてます！！ (2020年11月5日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪路 | 作成日時：2020年10月18日 0時
