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「忘れ物ないか」
「大丈夫、元から手ぶらだったし」
「了解」
降谷から借りた服と短パンを身にまとって玄関の外に出る。逆に私の服は降谷の家の中で畳まれたまま放置されている。
下着は昨日お金を借りて買ったコンビニのもの、そこまで思い出してハッとする。
「ね、降谷私お金ない！」
慌てる私を見て降谷はクスリと笑う。
「大丈夫、全部俺が出すよ、今までのお年玉全部貯めてあるし、帰ってきてから返してくれたらいいから」
そう言われれば頷く他ない。
絶対返すからねと意気込んで言えばやっぱり降谷は笑うだけだった。
「どこに行くか決めてないんだよね」
駅の改札を抜けて話しかける。
「まぁ、永江、緑と黄色と茶色と紺、どの色が好き？」
「え？黄色かなぁ」
「じゃあこっち」
降谷は私の手を掴んで階段を降りる。
「え、あっ、もしかして路線図の色聞いてたの？」
「うん、他に決め方がなかったから」
「なるほど……？」
私は右手に握られた一番安い切符を降谷に差し出す。
「ごめん失くすといけないからお財布に入れておいてもらってもいい？」
降谷は少し振り返って頷く。
「わかった」
ビリっとマジックテープの音が蝉の合唱と合わさった。
「お財布、意外。皮のとか使ってそうなのに」
「小学生の時に買ってもらったのだから。高校生になったら買い換えるつもり」
「ふ〜ん」
さすが降谷。物持ちいいなと感心する。
ホームに降り立った私に降谷はまたじゃんけんを仕掛けてきた。
今度は落ち着いて勝負したのに結局また負けて降谷側の方面の電車を待つことにする。
車内はあまり混んでいなかった。
冷房車の中で私と降谷は隣同士揺られる。
「いつになったら降りる？」
「寒くなったらでいいよ」
そこからしばらく会話はなかった。
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Lailah(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです。テーマの作品2つにも納得が行きました。その後の話も見てみたかったですがこれはこれで良かったです。良き作品を見せてくれてありがとうございます。 (2021年7月5日 12時) (
レス) id: 59f1e2127c (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - とても素敵な作品で、泣いてしまいました(笑)続きを作ってくださるのなら、楽しみにしています！ (2021年5月6日 19時) (レス) id: 2fea210edb (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - ↓ごめんなさい誤字です。正しくは「楽しく読ませていただきました。」です。 (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - とても素敵な作品で、楽しく読ませてました。これから二人はどうなるのか、続き楽しみにしてます！頑張ってください！ (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - とても素敵なお話でした。読むのが止まらずあっという間に読み終わってしまいました。 続きが読めるのを楽しみにしてます！！ (2020年11月5日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪路 | 作成日時：2020年10月18日 0時
