ねぇ駆け落ちしようか【降谷零】

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「Aちゃん」

「っ！煌兄ぃ！！」

横断歩道を渡った後、降谷と私が分かれる道で、後ろから聞い慣れた優しい声が私を呼んだ。

「よっ」

「やっほー久しぶり」

片手を上げて歩み寄ってくる煌兄ぃは本当にカッコいい。

「………。もしかして邪魔した？」

「へ？あっいやいや降谷は友達、じゃ、降谷また明日」

「あぁまた明日」

まだ少し不機嫌そうな降谷に手を振って分かれる。

「ほんとに友達？」

「ほんとに友達、クラスメイト」

頷きながら、煌兄ぃを見上げる。

「カッコよかったな、あぁいう奴モテんだろ」

「んー、そうだね、学校でかなり人気だよ」

「へ〜、Aちゃんは？」

「えっ私？」

「あの降谷くん？って子のこと」

「あー私は別に……」

「ふ〜ん、つまんねぇの」

好きなんだったら揶揄おうと思ってたのに。
目尻にシワを寄せて笑う笑みにドキリとする。

違うよ、煌兄ぃ。私が好きなのは煌兄ぃだよ。

(…言えたらどんなに楽か)

「煌兄ぃ最近見かけなかったね。実験忙しいの？」

煌兄ぃは私の隣の家に住むいわばお隣さん。本名は暮沢煌平で、最高にかっこいい私の片思い相手。
大学院で研究を続けてて、そのまま研究員になるのが夢らしい。

「あーまぁな、実験というよりはレポート？つってもわかんねぇーか」

煌兄ぃは歯切れ悪くこぼしてから、私の顔を覗き込む。

「なっ、何！？」

「ふはっ、過剰反応、今日うちに飯食いに来る？お袋に話しておくけど」

「えっ、いいの？行く！！」

素直に喜べば額にデコピンを食らわされる。

「いったい」

「許せって反応が面白いんだよ」

「ちょっとぉ！！」

拳を突き上げれば、笑いながら軽く走り出す煌兄ぃの後を追いかける。

中2は全然子供じゃないよ。
他の子と一緒にしないで、私は違うよ。
異性なんかに意識しない。あんなの相手になんないよ。まだ生理きてないけど、お腹はくびれてるんだよ。胸はまだまだだけど、人付き合いも世渡りも上手なんだよ。

(煌兄ぃ、大好き)

年の差なんてあっという間だよ。
お願いだから私のこと好きになって………







「なるわけないのに。バーカ」

自分で自分を自重する声が頭の中で木霊する。

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