ねぇ駆け落ちしようか【降谷零】

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「夏休み中はくれぐれもハメを外さないように！手紙はきちんとよく読んで、夜の8時以降に外へ出歩かない。お酒を取り扱うお店へ子供達だけで行かない。まさかないとは思うけど、子供達だけでの泊まりなどもってのほかですからね！スマートフォンパソコンの電子機器の使いすぎには気をつけて、夏休みだからといって昼夜逆転の生活なんて絶対駄目ですからね！！」

宿題がぎっしり詰まった鞄。今しがた配られた夏休み諸注意の手紙を折ってファイルに閉まってチャックを閉める。



結局悠とは一言も言葉を交わさないまま夏休みを迎えようとしている。


せめて一言、何か交わさねば、そう思いながら悠を見つめるけど、彼女は挨拶が終わった途端、私には追いつけないほどのスピードで飛び出してさっさとこの教室からいなくなってしまった。


この間の放課後のこと、

諸伏君の相手に私は役不足だと、私についての議論会という名の悪口大会があった日、その中でおずおずと口を開いて私について話す悠と、教室の扉越しに目が合ってしまったあの日。

もうとっくに彼女と私の縁は無かったことになっているのかもしれない。

ただただ悲しくて悔しくてしかたない。

バニラの甘い香り、どうして？


教室には人っ子一人いなくなって、私は重い鞄を持ち上げて今学期最後の教室を後にした。

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