ねぇ駆け落ちしようか【降谷零】

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その日は朝から運が良くなかった。



通学路では水たまりの水が跳ねて靴下を濡らしたし、教室に入る前にいつもはいないはずの生活指導の先生とすれ違ってスカートを注意されたし、お昼の給食にはご飯の中によそってくれた子のであろう髪の毛が入っていてとても食べられないと残したのを担任の安西先生に咎められたし、午後の体育ではテニスのラケットが仕舞われているゲージに足が擦れて太ももの横のところを切ってしまったから。
おまけにブルーな気持ちで鬱に陥ってたら知らぬ間に数学で当てられて、恥をかいてしまったし。


でもだからこそ、これ以上悪いことなんて起こらないと思っていたのに。

有難いくらいに裏切られて、私は静かに目を瞑る。





「お父さんがね、……その、……妊娠させてしまったみたいなの」



食卓に組んだ手を乗せて、迷子みたいな顔して母親は小さくそう告げた。

あぁ、やっと崩れるのね。

いつまでもこのまま過ごして行けるなんて思ってもいなかったから、私は一人で肩を落とす。


「Aちゃん…ねぇ、パパとママ、離婚するべきなのかしら？」

そんなの私に聞かないで。なんて酷いこと娘に聞くの？

貴方達が別れたら、私は一体どこに行けばいいと言うの。


「知らないそんなのお父さんと話し合えばいいじゃない。私は別になんだって大丈夫だし」

口をついてでる強がり(嘘)

あぁほんと、今日は運がない。

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