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「これ、頰に当てて」
タオルに包まれた保冷剤を受け取る。
降谷の家は丁度誰もいなかったようで、ほっと息を吐けば、私の腰掛けたソファの前に降谷はあぐらをかいて座った。
「親御さん仕事?」
私が尋ねると降谷は顔を横に振って言いにくそうに口ごもる。
「俺の両親万年新婚なんだよ。今は旅行中」
横に向けた顔は心なしか赤い。
「いいじゃん円満憧れる」
そう言って保冷剤の面を逆にする。
「…………それ誰に殴られたんだ」
不意に降谷は真剣な顔をして私に尋ねた。
私は言うか言うまいか迷ってそして小さく、なるだけ平静に聞こえるよう努めて声にした。
「父親」
(だった人。なんちゃって)
ぴしゃりと降谷の背筋が伸びたのがわかった。
「それって「あっ」……どうした」
なにか言いかけた降谷の言葉をつい遮ってしまった。
私はそれを右手に吹き出して、降谷に告げる。
「歯、抜けた」
その瞬間の何か抜け落ちたような、ギョッとした降谷の顔は忘れられない。
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Lailah(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです。テーマの作品2つにも納得が行きました。その後の話も見てみたかったですがこれはこれで良かったです。良き作品を見せてくれてありがとうございます。 (2021年7月5日 12時) (レス) id: 59f1e2127c (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - とても素敵な作品で、泣いてしまいました(笑)続きを作ってくださるのなら、楽しみにしています! (2021年5月6日 19時) (レス) id: 2fea210edb (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - ↓ごめんなさい誤字です。正しくは「楽しく読ませていただきました。」です。 (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - とても素敵な作品で、楽しく読ませてました。これから二人はどうなるのか、続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - とても素敵なお話でした。読むのが止まらずあっという間に読み終わってしまいました。 続きが読めるのを楽しみにしてます!! (2020年11月5日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪路 | 作成日時:2020年10月18日 0時